2012年06月29日
サマリー

日本からは玄葉外務大臣が政府代表として演説を行い、人間の安全保障の考え方に立ち、「緑の未来」をつくるための取り組みを実行していくことが表明された。具体的には、優れた環境技術・基幹インフラ・強靭性を備えた「環境未来都市」を世界に広めること、3年間で1万人規模の「緑の協力隊」を編成し、各国のグリーン経済への移行を支援すること、そして、数多くの震災からの復興経験を踏まえ、各国の強靭な社会づくりを支援すること、などが述べられている。グリーン経済への移行の分野と防災に関わる分野では、今後3年間でそれぞれ30億ドルの支援を行うことも表明されている(※3)。
環境省からは、成果文書の内容を具体的に実施するための提案として、「環境省イニシアティブ」が国連事務局に提出されている(※4)。同文書では、国内において「2050年に温室効果ガス排出を80%削減する低炭素社会、3R(※5)を基調とした循環型社会、生物多様性を基盤とした自然共生社会を目指していく」ことが表明されている。また、アジア太平洋地域を中心とする世界において、成果文書のⅤの内容として掲げられた水や気候変動などの主要な優先分野で、日本が積極的に推進する取り組みなども示されている。
同会議の開催に伴って、「日本のグリーン・イノベーション-復興への力、世界との絆」をテーマとして、ジャパンパビリオンも設置された。企業や官公庁、自治体などによる展示で日本の優れた環境・省エネ技術などが紹介されたほか、東北の復興と日本の多面的魅力をアピールするセミナーや「ジャパンイブニング~Tohoku Forward」などのイベントも開催されている。このパビリオンには、12日間の設置期間中に各国から18,000人余りが訪れたという。
事前準備の段階で日本は、経済社会の進歩を計測する指標として、「幸福度」を提案していた(※6)。しかし、途上国などの反対があり、GDPを補完する指標の必要性を認識し、指標開発への取り組みを進めるという取り扱いに落ち着いたようである。幸福度を尺度にして測れば、途上国が先進国を上回る場合もあり得る。そのような場合に、途上国にも応分の責任や負担が求められることが懸念されたのかもしれない。既に経済成長を遂げた先進国と、これから開発を進めて経済規模拡大を図りたい途上国では、その立場に大きな違いがあるということであろう。
今回の会議については、リオ宣言(※7)を再確認するにとどまり、新たな取り組みや具体的なコミットメントが少ないなどの批判的な評価もみられる。たしかに、成果文書には、循環型社会の3Rよりも、「Recognize」「Reaffirm」「Reiterate」などのRが目立っている印象も受ける。しかし、途上国と先進国が対峙する構図に、急成長を遂げている新興国の立場が加わり、状況が20年前より複雑になっている背景もある。先進各国が景気低迷や財政問題に苦しむ傍ら、現在のインドのGDPは20年前のドイツの水準に達しており、中国のGDPは既に日本を上回っている。
リオ宣言に盛り込まれた「共通だが差異ある責任」という考え方は、今回の成果文書でも再確認されているが、先進国からみれば、責任の差異は縮まったということになろう。これに対して、漸く成長軌道に乗り始めた国々では、経済成長の制約要因や大きな負担は受け入れにくいであろう。貧困を撲滅するために、先進国や新興国の理解や援助を必要とする国も少なくない。しかし、各国がどのように主張しようとも、解決しなければならない課題が減るわけではない。将来への責任の総和が、小さくなるわけでもない。共通の課題を解決するためには、各国が自らの責任を自覚して、最大限の努力を積み重ねていくことが重要であろう。

(※1)1992年にリオデジャネイロで開催された「国連環境開発会議(地球サミット)」から20年目にあたり、この会議はリオ+20と呼ばれている。
(※2)「The future we want 」UNCSD(United Nations Conference on Sustainable Development)
(※3)「国連持続可能な開発会議(リオ+20)」外務省
(※4)「国連持続可能な開発会議(リオ+20)における『環境省イニシアティブ』の国連事務局への提出について(お知らせ)」 環境省
(※5)環境と経済が両立した循環型社会を形成してくキーワードとして、Reduce、Reuse、Recycle を指す
(※6)「国連持続可能な開発会議(リオ+20)成果文書への日本政府インプット」外務省
(※7)1992年の国連環境開発会議(地球サミット)で採択された「環境と開発に関するリオ宣言」
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
GX-ETS本格稼働で強まるJ-クレジットの早期確保への動き
市場に依存しない、上流(創出)関与と相対・長期での確保が鍵
2026年02月05日
-
人的資本可視化指針改訂で期待される経営戦略と人材戦略の深化
期待される開示の負担軽減と比較可能性の向上
2026年01月23日
-
バイオマス発電の質による選別と高付加価値化への潮流
BECCS・国内資源活用という新たな方向性
2026年01月21日
最新のレポート・コラム
-
IOSCOの2026年作業プログラム
グローバル化とデジタル技術の進化がもたらす構造的リスクに対処
2026年03月13日
-
財政安定化の条件:ドーマー条件成立だけでなく、PB黒字化が重要
財政シリーズレポート4
2026年03月13日
-
米国:AIブームの裏側で高まる金融リスク
ITセクターの収益懸念が揺らすプライベート・クレジット市場
2026年03月13日
-
大和のクリプトナビ No.8 東証が暗号資産トレジャリー企業への対応を検討か
トレジャリー企業を巡る直近の動向と海外制度の整理
2026年03月12日
-
続・アクティビスト投資家進化論
~今後アクティビスト投資家に求められる「価値創造力」~
2026年03月13日
よく読まれているリサーチレポート
-
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
-
理系進路選択に対する男女差の要因分析
女性の理系人材を増やすには、より早期段階での介入や対応が必要
2026年02月06日
-
2026年の東証改革の方針
上場会社の質の向上と新陳代謝を促進する市場機能の強化
2026年02月02日
-
高市政権の財政政策は更なる円安を招くのか
財政支出の拡大ショックは翌年の円安に繋がる
2025年12月18日
-
第228回日本経済予測
第2次高市政権の重点政策、どう進めるか①外国人労働者受け入れ、②消費減税/成長・危機管理投資、を検証
2026年02月20日
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
理系進路選択に対する男女差の要因分析
女性の理系人材を増やすには、より早期段階での介入や対応が必要
2026年02月06日
2026年の東証改革の方針
上場会社の質の向上と新陳代謝を促進する市場機能の強化
2026年02月02日
高市政権の財政政策は更なる円安を招くのか
財政支出の拡大ショックは翌年の円安に繋がる
2025年12月18日
第228回日本経済予測
第2次高市政権の重点政策、どう進めるか①外国人労働者受け入れ、②消費減税/成長・危機管理投資、を検証
2026年02月20日

