太陽光発電政策と産業育成

~ドイツの経験に学ぶ~『大和総研調査季報』 2011年秋季号(vol.4)掲載

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2012年02月01日

  • 物江 陽子

サマリー

ドイツでは、2000年に固定価格買取制度を導入してから太陽光発電の導入量が急増し、2010年には世界の累積導入量の43%を占める最大の太陽光発電導入国となった。導入量増加に伴い関連産業も育ち、2010年末時点で関連企業は1万社、関連雇用は13万人と推定される。なかでも旧東独地域では、投資優遇政策が実施され、太陽光発電関連の産業集積が形成されてきた。しかし、2000年代半ば以降、新興国企業の参入が相次ぎ、2010年にドイツの太陽光発電市場における輸入比率は約8割に達したとみられる。太陽電池製造企業は苦境に立たされ、製造拠点の海外移転も加速している。

日本政府は2020年に太陽光発電の導入量を2005年比20倍にする目標を閣議決定している。日本の太陽電池国内出荷量に占める輸入比率は現在21%だが、今後買取制度導入により導入量が拡大し、住宅用のみでなく、産業用・発電用の導入量が増えれば、ドイツ同様、新興国企業のシェアは拡大していくであろう。再生可能エネルギーの導入は安全保障の観点からも重要な課題だが、発電量を増すと同時に国内の産業育成に資する、注意深い制度設計が求められている。

大和総研調査季報 2024年新春号Vol.53

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