2011年10月28日
サマリー
まず、図表1がグローバル投資型SRIファンドのリターン指数の推移である。対象としたSRIファンドは2010年末で174本であった。この図からわかるように、グローバル投資型SRIファンドのリターン指数は株式市場との連動性が高く、2008年のリーマン・ショックを契機とした株式市場の急落と、その後の回復の影響を強く受けていることがわかる。ただ、詳細にみると2008年後半から2009年にかけての株式市場の急落時は、SRIファンドのリターン指数の下落の方が小さい。運用のプロセスにESG要因を考慮することが、運用リスクを下げた可能性を指摘できよう。しかし、その後の相場回復期には株式市場の上昇に追随できていないようである。
図表1 グローバル投資型SRIファンドのリターン指数の推移

(出所)Eurekahedge、MSCIより大和総研作成
次に、図表2が直近3年間で算出したグローバル投資型SRIファンドの超過リターン(対株式市場)の度数分布である。分析対象ファンドは148本であるが、超過リターンがプラスとなったファンドは32本であった。約2割のファンドが株式市場全体よりも高いリターンを実現したことになる。また、約半数のファンドは超過リターンが0%から-5%の間に入っており、超過リターンがプラスのファンドも、ほとんどのファンドの超過リターンが5%以下となっている。SRIファンドは、投資プロセスにESG要因を取り入れるという特徴を持つが、そのリターンの水準は株式市場全体のリターンの水準と大きな違いはないようである。
図表2 グローバル投資型SRIファンドの超過リターンの度数分布

(注) 2008年8月から2011年7月の月次データから算出
(出所)Eurekahedge、MSCIより大和総研作成
ファンドの運用パフォーマンスは、リスクとリターンの両面からみる必要がある。そこで、図表3にリスク(標準偏差)とリターンの散布図を示した。グローバル投資型SRIファンドのリスクとリターンの水準は個々のファンドで大きく異なることがわかる。また、市場全体と同程度のリスクを負担しているファンドでも、リターンには大きな違いが生じている。リスクを考慮したパフォーマンス尺度の一つであるシャープ・レシオを算出すると、超過リターンの場合と同様に、約2割(148本中31本)のファンドが市場全体を超えていた。
このように、直近の3年間でみるとグローバル投資型SRIファンドの約2割が株式市場全体を上回るリターンを獲得し、シャープ・レシオでも同様に約2割のファンドのパフォーマンスが市場全体を超えていた。そして、分析に用いたファンドのリターンはコスト控除後の数値であるが、リターンに平均運用報酬(1.27%)を加えれば市場を越えるリターンを獲得したファンドは3割強に増える。他のアクティブ・ファンドと同様に、SRIファンドにおいても運用報酬がファンドのリターンに与える影響は大きいといえよう。
図表3 グローバル投資型SRIファンドのリスクとリターン

(注) 2008年8月から2011年7月の月次データから算出
(出所)Eurekahedge、MSCIより大和総研作成
*Eurekahedgeのデータは、各運用機関及び外部の情報を元に作成しております。Eurekahedge及びその関係者は情報の正確性、完全性、市場性、仮定、計算などについて保証を行っておりません。情報の閲覧・利用者は、データの使用に際して、情報における全てのリスクを認識し、負う必要があります。Eurekahedgeではデータ及び情報に基づくいかなる理由の損害に関しても責任を負いかねます。データは、特定のファンド、有価証券、または金融商品、会社への投資に関する勧誘或いは販売勧誘を構成するものではなく、また、独立、金融機関、専門家としての助言として解釈されるべきではありません。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
2026年3月期有報の人的資本開示①
既存欄と新設欄(人材戦略に関する基本方針等)の情報分散に課題
2026年07月07日
-
不平等・社会関連財務情報開示タスクフォース(TISFD)の第一草案を読む
「社会(S)」情報開示の新たな展開が日本企業に示唆すること
2026年07月07日
-
パリ協定6条の運用本格化がJCMクレジットに与える影響
国連報告・審査による信頼性向上と、クレジット確保の不確実性
2026年07月07日
最新のレポート・コラム
-
2025年度の個人向け社債市場の動向
発行額は過去最高に。今後は発行体の裾野が広がるかが注目点
2026年07月10日
-
外為法審査による買収案件中止とその示唆
外為法に基づく投資審査制度と判断のポイント
2026年07月10日
-
26年度最低賃金改定のポイント①
高市政権はより緩慢な引上げを容認/改定内容への説明責任が焦点
2026年07月09日
-
米国:AI関連投資の持続性を左右する3つの要因
①ハイパースケーラーの収益化志向、②「循環資金」が内包するリスク、③レバレッジ型ETFによる変動拡大
2026年07月09日
-
実務手引き「社債発行のガイドブック」— 社債発行への入り口
2026年07月10日
よく読まれているリサーチレポート
-
中国経済見通し:泥沼化する不動産不況
低迷する内需。財政出動・さらなる金融緩和への期待が高まる
2026年06月22日
-
ナフサ問題がもたらす日本経済の不安要素
物価上昇は避けられず、供給不足が生じればさらなる経済下押しも
2026年06月15日
-
第229回日本経済予測(改訂版)
混迷する中東情勢、その先で問われる日本経済の構造転換①「持続的成長」の条件、②資産形成と成長の好循環、を検証
2026年06月08日
-
「成長投資ガイダンス」の解釈とその活用法
資本コストを上回る資本収益性の確保は価値創造(EP)の前提条件
2026年06月17日
-
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
中国経済見通し:泥沼化する不動産不況
低迷する内需。財政出動・さらなる金融緩和への期待が高まる
2026年06月22日
ナフサ問題がもたらす日本経済の不安要素
物価上昇は避けられず、供給不足が生じればさらなる経済下押しも
2026年06月15日
第229回日本経済予測(改訂版)
混迷する中東情勢、その先で問われる日本経済の構造転換①「持続的成長」の条件、②資産形成と成長の好循環、を検証
2026年06月08日
「成長投資ガイダンス」の解釈とその活用法
資本コストを上回る資本収益性の確保は価値創造(EP)の前提条件
2026年06月17日
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日

