関電管内で10%以上の節電要請、原発再起動の目処立たず

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2011年08月05日

  • 真鍋 裕子

サマリー

7月20日、政府(※1)は「西日本5社の今夏の需給対策について」を発表し、関西電力管内において、今夏のピーク期間・時間帯(※2)における10%以上の節電を要請した。既に関西電力から6月10日に15%節電のお願いが行われているが、状況が緊迫化したことから、政府要請により一層の節電努力を引き出すことが狙いと思われる。

関西電力管内では、予定通り7月21日に高浜原発4号機が、22日に大飯原発4号機が定期点検に入った。一方で7月16日、営業運転再開に向けて最終検査の申請を行うことを発表したばかりであった調整運転中の大飯原発1号機が、トラブルにより手動停止した。さらに7月18日、電力会社間の融通を予定していた中国電力の三隅火力発電所がトラブル停止した。これらの影響により、供給力増加対策(※3)を行ったとしても今夏の予備率(※4)がマイナス6.2%となることが明らかになってきた。他の西日本4社(※5)については、供給力増加対策を行うことで各社とも予備率がプラス2~4%となる予定だが、十分とは言えず、政府は国民生活、及び経済活動に支障が生じない範囲での節電を呼びかけている。

電力会社別の電源構成比をみると、2010年実績では四国電力、関西電力、北海道電力における原発比率がいずれも43%と高い(図表1)。関西電力では、現在11基中4基の原発が稼働しているが、今冬には4基全てが定期点検に入る(図表2)。管直人首相は、7月13日の記者会見で「計画的、段階的に原発依存度を下げ、将来は原発がなくてもきちんとやっていける社会を実現していく」ことを述べたが、目下の電力不安の原因となっている定期点検後の原発の再起動に関しては、保安院の位置づけを含めた「新しいルール」の検討が必要であることを述べるに留まった。再起動させるのであれば、国民が納得できるような再起動の条件を示すべきであるし、完全停止または停止を長期化させるのであれば、各電力会社・企業が火力発電所の新増設や燃料調達先の確保といった対応を行うための時間的猶予を与える必要がある。「脱原発依存」を発信するだけでなく、目の前の原発再起動の可否に関する明確な方針と工程を示すことが現場では求められている。

震災直後に脱原発を発表したドイツでは、4カ月足らずの7月8日に脱原発法案を成立させた。ドイツ政府は、2022年までに段階的に原発を停止し、併せて火力発電増強、自然エネルギー倍増を進めていく計画を掲げている。日本政府が同様の「脱原発依存」を掲げるのであれば、原発再起動に関する方針を含めた「脱原発依存」へ向けたロードマップを早急に示すことが必要である。

図表1 電源構成比(発電電力量)
図表1 電源構成比(発電電力量)
(注)東北電力、東京電力、電力合計は2009年、その他は2010年の実績または推計実績を用いている。
(出所)各電力会社の供給計画より大和総研作成

図表2 原子力発電所の稼働状況(関西電力)
図表2 原子力発電所の稼働状況(関西電力)
(出所)関西電力プレスリリースより大和総研作成

(※1)電力需給に関する検討会合(座長:内閣官房長官)
(※2)目安は、7月25日~9月22日の平日の9時から20時
(※3)発電所の補修作業時期の変更、自家発・PPSからの購入増、他電力会社からの融通等
(※4)最大需要に対する供給力の能力を示す。予備率=(供給力-最大需要)/最大需要。最低でも3%は必要とされている。
(※5)北陸電力、中国電力、四国電力、九州電力

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