2011年06月22日
サマリー
「ビジネスと人権」に関する国連事務総長の特別代表を務めるハーバード大学のジョン・ラギー教授は「ビジネスと人権に関する指導原則(Guiding Principles)」の最終版を2011年3月に公表した。同原則はラギー教授が2008年5月に国連人権委員会に提出した「人権の保護、尊重、救済の政策フレームワーク」(ラギー報告)の実施指針に相当し、同委員会により2011年6月に採択される見通しである。
本原則は、ビジネスと人権に関する指針を関連のある全ての主体に提示するための包括的な枠組みであり、人権への意識が高いとされる欧州地域を中心に多くの関心を集めている原則である。公表された資料によると、同原則は以下の3点を柱としている。
(1)国家による人権保護の義務
(2)人権を尊重する企業の責任
(3)企業活動による人権侵害を受けた者への救済手段の必要性
上記の3点に基づき、国家や企業は人権への対応を求められることになり、企業は組織内やサプライチェーン上での人権侵害の発生を防止するための「人権デューデリジェンス」等が推奨されている。人権デューデリジェンスとは、企業等の組織が、人権に関する基本方針の策定、人権への方針等を組織内で徹底させるためのマネジメントシステムの構築、ビジネスが人権に与える影響の評価、関連情報の開示と取組みに対する評価を継続して行うことを指す。さらに、企業が人権に影響を与える範囲を、直接的だけでなく間接的にも捉えるといういわゆるサプライチェーン上の管理も求めていることも注目される。
2010年11月に発行された社会的責任に関する国際規格である「ISO 26000」には、ラギー氏の人権と企業活動フレームワークの考え方が強く反映されている。ラギー氏の意見に基づき上述の「人権デューデリジェンス」が取り込まれ、企業がマネジメントの観点から人権への適切な対応を行うことを求めている。
また、CSRに関する情報開示の世界的なガイドラインを公表しているGRI(Global Reporting Initiative)が3月に公表したガイドライン最新版や、2011年5月に改訂版が公表された経済協力開発機構(OECD)の「多国籍企業ガイドライン」も人権に関する取組みや情報開示を求めている。このほかにも、一部の機関投資家がアフリカ等の開発途上国や紛争地域での人権問題を理由に特定の企業への投資を見送るという動きも出ており、今後は多くの企業が「人権」問題への対応を明確にした上で、取組みに関する情報開示を求められると予想される。そのため、海外で事業展開を行う企業は、今回公表された原則等を参照して自社の人権に対する取組みのレビューを行うことが求められると考えられる。
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