サマリー
◆格差の指標である金融資産のジニ係数を確認すると、長期的に上昇傾向にある。先行研究によれば、世帯主の年齢階級別の金融資産ジニ係数は中若年層で上昇傾向にあり、金融資産をほとんど持たない世帯が増加していることが一因として挙げられている。
◆金融資産の分布を確認すると、金融資産残高ゼロ世帯の比率は10%、100万円未満世帯まで対象を拡大すると、比率は23%を占める(数字は総務省「2019年全国家計構造調査」ベース)。また、金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査」ベースでの金融資産非保有世帯は、単身世帯で特に上昇していることが確認された。
◆金融資産を多く保有する世帯に目を向ければ、大部分を60歳以上世帯が占めている。基本的に高齢者世帯は世帯当たり金融資産残高が多くなる傾向にあるが、この高齢者世帯が増えたことで、家計部門全体で構造的に格差が生じている面がある。また、金融資産保有の上位層(上位1%等)が家計の金融資産全体に占める比率は、2014年から2019年にかけて上昇した。ただし、日本は米国等の他の先進国と比べれば、富の一極集中の程度は低い。
◆金融資産格差について日本でまず心配すべきなのは、金融資産ゼロ世帯やほとんど持たない世帯の増加であると考える。今後については、昨今の金融資産選択やライフスタイルの多様化が、金融資産格差の拡大要因になり得ることにも注視が必要だろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
トランプ大統領「議決権行使助言業者への規制強化」
議決権行使助言業者規制に関する大統領令を発出
2025年12月16日
-
議決権行使助言業者への依拠は共同保有認定
米国SECのウエダ委員が議決権行使助言業者規制の方向性を明らかに
2025年12月09日
-
投信運用広がるDC、時価上昇で資産額増加
元本確保型商品100%運用の加入者は2割強、分散投資の促進が課題
2025年11月14日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
-
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
-
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日

