「日本型」金融資産格差を読み解く

日本で心配されるのは金融資産ゼロ世帯の増加

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2021年11月30日

  • ニューヨークリサーチセンター 研究員(NY駐在) 藤原 翼

サマリー

◆格差の指標である金融資産のジニ係数を確認すると、長期的に上昇傾向にある。先行研究によれば、世帯主の年齢階級別の金融資産ジニ係数は中若年層で上昇傾向にあり、金融資産をほとんど持たない世帯が増加していることが一因として挙げられている。

◆金融資産の分布を確認すると、金融資産残高ゼロ世帯の比率は10%、100万円未満世帯まで対象を拡大すると、比率は23%を占める(数字は総務省「2019年全国家計構造調査」ベース)。また、金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査」ベースでの金融資産非保有世帯は、単身世帯で特に上昇していることが確認された。

◆金融資産を多く保有する世帯に目を向ければ、大部分を60歳以上世帯が占めている。基本的に高齢者世帯は世帯当たり金融資産残高が多くなる傾向にあるが、この高齢者世帯が増えたことで、家計部門全体で構造的に格差が生じている面がある。また、金融資産保有の上位層(上位1%等)が家計の金融資産全体に占める比率は、2014年から2019年にかけて上昇した。ただし、日本は米国等の他の先進国と比べれば、富の一極集中の程度は低い。

◆金融資産格差について日本でまず心配すべきなのは、金融資産ゼロ世帯やほとんど持たない世帯の増加であると考える。今後については、昨今の金融資産選択やライフスタイルの多様化が、金融資産格差の拡大要因になり得ることにも注視が必要だろう。

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