サマリー
◆2016年5月24日、「確定拠出年金法等の一部を改正する法律」が衆議院で可決、成立した。確定拠出年金(以下、DC)の運用の改善を目的として、あらかじめ定められた指定運用方法(いわゆるデフォルト商品による運用)に関する規定が整備されることになった。
◆わが国のDCは、制度導入以来、DC全体の資産構成が元本確保型の商品に偏っていることが課題とされてきた。今回の法改正により、デフォルト商品として分散投資効果が期待できる商品設定を促す措置が講じられることになった。具体的なデフォルト商品としては、ライフ・サイクル・ファンドなどが想定されよう。
◆OECDでは、「DC改善のためのロードマップ」を発表し、その中で、DCのデフォルト商品としては、ライフ・サイクル・ファンドが検討されるべきだと指摘している。しかし、各国の事例を確認すると、デフォルト商品戦略のみならず、制度への自動加入の仕組みを利用するなど、様々な工夫がなされている。また、デフォルト商品としてライフ・サイクル・ファンドを設定するにあたり、注意すべき点も確認できる。
◆わが国においても、デフォルト商品としてライフ・サイクル・ファンドが設定されれば、ある程度の分散投資効果が得られることが期待される。その一方、事業主等には、これまで以上に加入者に対する十分な投資教育や情報提供が求められることになろう。また、英国を参考に、わが国のDC普及拡大に向けたさらなる制度見直しも進められてよいのではないだろうか。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
米国DC「自動加入化」の効果と今後の期待
若年層や低所得者層の加入率向上と資産形成の促進に有効な仕組み
2025年10月07日
-
議決権行使における取締役兼務数基準の今後
ISSの意見募集結果:「投資家」は積極的だが、会社側には不満
2025年10月03日
-
大和のクリプトナビ No.4 ビットコインは「デジタル・ゴールド」か?
一定の妥当性はあるが脆弱性が残る。制度の整備や需要の多様化が鍵
2025年10月02日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日