2015年05月15日
サマリー
◆委任状争奪戦にまで発展し、世間の注目を集めた大塚家具の経営権を巡る争いは単なる「親子喧嘩」「御家騒動」ではない。経営方針の違いだけではなく、コーポレートガバナンスのあり方から、機関投資家が留意するべきスチュワードシップの本質、そして少子化や高齢化を背景とした事業承継の進め方に至るまで、今日の日本企業における課題を凝縮したビジネスイシューといえよう。
◆経営方針や経営戦略に関する考え方の違いは当初、父娘の世代間における「価値観の相違」といった必ずしも正しいとは言えないコンテクストでメディアに取り上げられたことから単純な二元論に収斂され、結果として多くの人の誤解を招いたことは否めない。
◆特に、そのビジネスモデル、価格戦略、販売スタイル、広告宣伝の4領域については「高級路線か一般大衆路線か」「IKEAやニトリを追うのか、追わないのか」など二者択一を迫るかのような論調の中で事の本質を見失いがちになったことは記憶に新しい。
◆本稿では、広告宣伝を除く3領域について先ずは簡単に整理していくが、こと基本戦略に関しては父娘で大きな隔たりはないように思われる。ただ、仮に事業環境の変化を捉えて何かを「変える」なら、何を「変えない」のか即ち、企業経営上の「不易」は一体何かを今一度確認する必要があるだろう。
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