小売業の第二四半期決算が相次いでいるが、震災特需の反動減や国内景気の低迷等をうけて厳しい見通しが広がっている。2014年4月の消費税引き上げを控えて、今後小売り各社の生き残り競争が一段と本格化するだろう。出店戦略、商品戦略、業界再編の動きは強まる方向にある。



小売りセクターの中の勝ち組
表は今年に入ってからの消費関連データの月次推移(前年同月比伸び率%:既存店ベース)である。新聞等で報じられているように、6月以降は一段と厳しさを増していることがわかる。これまで相対的に好調であったコンビニエンスストア(以下、コンビニ)もマイナスに転じている。


消費関連データの月次売上伸び率(既存店ベース:前年同月比%)
消費関連データの月次売上伸び率(既存店ベース:前年同月比%)
出所:経済産業省「商業販売統計」、日本チェーンストア協会、コスモス薬品各HP


しかしながら、すべての企業が低迷しているわけではない。表にあるようにドラッグストアのコスモス薬品(東証1部、銘柄コード3349)は、既存店ベースで8%前後の増収を維持、新規出店も加味した全店ベースでは20%増収と小売り関連セクターの中では目立った動きといえる。10月12日に発表された第一四半期(2012年6~8月)決算では売上822億円(前年同期比20%増収)、営業利益49億円(同26%増益)を達成した。株価も急上昇しており、昨年末の3975円から10月29日には8140円と約2倍に上昇、上場来高値を更新中である。この好調の背景は何であろうか。



コスモス薬品の戦略
コスモス薬品は九州が地盤のドラッグストアだが、売上構成は医薬品17%、化粧品12%、雑貨16%、一般食品53%で、生鮮食料品以外の食品が中心である。経営理念は「地域の生活をより便利で豊かにすること」であり、「展開する店舗周辺のお客様に、何度も足を運んでいただける店づくりを推進し、コンビニエンス、スペシャリティー、ディスカウントを高い次元に保った『小商圏型メガドラッグストア』というフォーマットの完成を追求する」としている。小さな商圏(商圏人口1万人)に可能な限り大きな大型店(売場面積2,000平米または1,000平米)をつくり、低価格商品を提供し地域での圧倒的シェア確保を目指す。低価格商品としては、プライベートブランドで「ON365」を展開している。現在の出店地域は九州352、四国51、中国47、兵庫15の465店舗であり、前期は52店舗純増となった。今期も55店舗の純増を計画している。最近の月次売上をみると、こうした企業戦略が消費者に支持され、地域のスーパーやコンビニ等の顧客を取り込んでいると推定される。低価格を前面に打ち出した積極出店がコスモス薬品好調の背景といえる。



スーパーの対応策
以上のように消費者は日常消耗品に対しては価格感応度が高い。このため消費税引き上げ分をそのまま価格転嫁出来る可能性は低く、小売り側の対応としては競合他社と比べて低価格となるような(少なくとも割高ではない)価格設定ができるかどうかが重要となろう。その鍵となるのが通常商品と比べて2~5割程度価格が安く提供できるPB(プライベートブランド)である。自社で競争力のあるPBが提供できない場合には、すでに供給体制のある他社との連携をすすめる必要がある。その結果、業界再編が加速することも予想される。


PB戦略で先行しているイオンは「トップバリュー」の売上が今上半期に3163億円(前年比33%増、イオンリテールに占める売上構成比は6~8月期には19.1%)となった。年度では7000億円を突破する見通しである。またセブン&アイホールディングスはPBの「セブンプレミアム」の商品数増加により今期4900億円の売上を計画している。



コンビニとの競争激化も
スーパーの競合相手としてコンビニの動向も注目せねばならない。グラフは商業販売統計から見た、百貨店、スーパー、コンビニの売上推移である。長期的にみれば、コンビニはまだ成長途上といえよう。店舗数は1997年度末に3万1550店あったが、2011年度末で4万5753店まで増加、ここにきて各社とも出店ペースを上げている。業界トップのセブンイレブンは2013年2月末で1万4855店(今期出店1350、閉鎖500で純増850店の計画)に達する。また来春を目途に初めて四国地方へ出店し、2019年2月末までに520店出店すると発表した。ローソンは2013年2月末で1万1047店(出店940、閉鎖350、純増590)、ファミリーマートは同8664店(出店800、閉鎖300、純増500)と計画している。コンビニ上位3社だけで、今年度1940店の純増(新規出店は3090店)となる。


先にみたように、コンビニ各社はPB戦略を活発化しており、低価格商品や高齢化対応商品などの提供を増やすと思われる。IT化で先行しているだけに、予想外の新サービスなどが登場するかもしれない。



今回は主に日常消耗品の動向に関してまとめたが、中堅スーパーにとっては生鮮食料品や惣菜等による差別化の工夫も重要なポイントとなろう。いずれにしても、地域特性などもあろうが、競合他社の動きを把握し、適切な対応策を構築することが急務といえよう。


業態別売上推移
業態別売上推移
出所:経済産業省「商業販売統計」より大和総研作成

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。

関連のサービス