2011年07月27日
上場会社の中に持株会社が何社あるかご存知であろうか。筆者の知る限りそのようなデータベースが存在しないため、自ら調べて見ることにした。対象を、2011年6月末時点で上場しており、1997年12月施行の改正独占禁止法により持株会社設立が解禁されて以降、会社分割や株式移転、株式交換、営業譲渡等の組織再編を行い持株会社に移行した会社とし、適時開示資料や有価証券報告書等の情報を元に抽出した。抽出にあたり、純粋持株会社であるか事業持株会社であるかは考慮しなかったが、持株会社に移行後、主要な子会社を合併し事業会社化した会社は除外した。
調査の範囲では、351社が持株会社であることが判明した。これは、上場会社約3,600社の約1割に相当する。この数値を見て多いと感じる方もいるかもしれない。しかし、成長戦略をいかに描くのか、余剰資金をどのように活用するのか等の課題を抱える経営者の多くがM&Aを経営戦略のひとつと考えていることや、人口減少、少子高齢化社会における各業界内でのプレイヤー過多の将来的な解消、業界再編の必要性等を考えると、持株会社化は経営課題に対応するためのひとつの選択肢であり、この351社と言う数字は決して多い数字ではないと感じられる。
これら351社がいつ持株会社に移行したかを知るために、持株会社化の年別推移をまとめたものが以下のグラフである。
持株会社に移行した上場会社の年別推移


このグラフは、調査時点(2011年6月末)での上場持株会社を対象としているため、実際に各年に持株会社化した上場会社数としては、既に上場廃止になった会社や合併により事業会社化した会社等を加える必要があり、この数字以上の社数となる。
また、2011年7月1日以降、年内に持株会社に移行することを公表している上場会社が、調査した範囲では20社あり、これらを加えると今年も30社を超える会社が持株会社に移行することになる。持株会社化するにあたっては、各会社の個別の事情や業績、景気動向、業界動向、業種特性等が重要な要因となるため単純な推測はできないが、過去からの推移と前述したような背景を鑑みると、来年以降も一定程度割合で上場会社が持株会社化を検討し、移行していくものと考えられる。
持株会社化するにあたっては様々な検討事項が存在する。現在、持株会社化をぼんやりと思案されている経営者や経営企画担当の方も多いと思われる。中長期の経営戦略を考えるにあたり取組みのひとつとして、是非一度、具体的な検討をして見てはいかがであろうか。
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