2011年05月18日
新聞等で「M&A」という言葉を見ない日はないが、「M&A」とは、そもそも何だろう?
一般的には、「M&A」とは、merger and acquisitionの略で、mergerは合併、acquisitionは買収を意味する。最近は、事業の分離(divestiture)も「M&A」に含めるのが通常である。
読者の中には「グループ再編」という言葉を、ご存知の方も多いと思う。「グループ再編」とは、企業が子会社や関連会社等のグループ会社を対象に組織再編を行うことを意味する
「グループ再編」は、広義の意味ではM&Aに属するが、純粋なM&Aとは言い難い。
「グループ再編」は、純粋持株会社の解禁や新会社法の施行、組織再編税制の創設等を背景に、近年増加傾向にある。
「持株会社化」と「M&A」、「グループ再編」は、どのような関係にあるのだろうか。
「持株会社化」には、大きく分けて2つのパターンがある。1つ目は、1つの会社を、持株会社と事業子会社に分離するパターンである(グループ再編)。2つ目は、複数の会社が経営を統合する場合において、共通の親会社を設立するようなパターンである(M&A)。
持株会社化のうち、前者(グループ再編)について説明すると、事業を多角的に行っている会社が、戦略と事業の分離により、効率的な事業運営の実現を志向して、持株会社化を決断している。各社のプレスリリースによると、「事業特性を最大限に発揮し、成長力と競争力を向上すること」・「事業会社による経営判断の迅速化」・「コーポレート・ガバナンスの向上」・「経営者人材の育成」等が、「持株会社化」の主な目的となっている。
純粋持株会社の創設が解禁されて10年あまりであるが、持株会社体制は、業種・会社規模を問わず、幅広く導入されている。現在においても、持株会社化を検討する会社は多い。私どもの部署(事業再編コンサルティング部)では、持株会社化コンサルティングを、業務の3本柱の1つとして、ここ7、8年継続して行って来た(他の2つの柱は、事業評価とグループ再編コンサルティング)。持株会社化については、いろいろな意味で、貴重な経験を積ませて頂いている。
どういう場面でコンサルティングを行うかであるが、持株会社化の検討段階というよりは、持株会社化が決定された段階以降の方が圧倒的に多い。持株会社化を決断した後において、いつ何をどのように行うか(プランニング・スケジューリング・タスクの洗い出し等)について、適時にアドバイスを行っていく(業務スコープは、期間・料金等により異なる)。
持株会社化コンサルティングの経験からいえることは、当事会社にとっては、「持株会社化」自体よりも「持株会社」という組織を選択するに至った意思決定の過程が最も重要であるという点である。「持株会社」という体制は、形式であって、中身が伴わなければ、「仏作って魂入れず」になってしまう。持株会社化に係わる役員・従業員は、プロジェクトにおいて、会社の組織・機能・プロセス等をゼロベースで見直しをする必要がある。その際、自分の頭で考え、仲間上司と激論を戦わせる。時には自社のみならず、グループ会社の社員が加わることもある。その経験そのものが役員・従業員の血肉となり、グループ全体の将来を担っていく人材に育っていくのではないかと思う。
私どもは、その中では、あくまでも黒子であって、表に出ることは少ない。ただ、数多くの事例を見ていることから、的確なアドバイスを行い、プロジェクト自体の成功のみを信じて、コンサルティングを進めていく。
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