中国の燃料電池自動車政策
地方政府主導で急成長が期待される水素・燃料電池自動車産業
2021年10月29日
サマリー
◆中国政府は2000年代初頭から省エネルギー・新エネルギー自動車として電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)とともに燃料電池自動車(FCV)の開発と産業化を支援してきた。このうち先行したのはEVであり、今や中国は世界一の自動車大国であるとともに年間100万台以上を出荷する世界一のEV大国ともなっている。一方、FCVは、出荷台数は毎年伸びているものの、大きな成長とは言えない。FCV、燃料となる水素ともに高コストであることが主な要因だと考えられる。
◆中国におけるFCVは大部分が商用車、特にバス、トラック等の中大型商用車であり、ユーザーの大部分が地方政府や公営事業者である。地域の新産業として水素・FCVを振興したい地方政府が、主に公共サービス用の中大型FCVを購入、需要を作り出してきた。
◆2019年以降、中央政府は水素・FCV政策を転換し、脱炭素を実現する有効な方策として水素とFCVに本腰を入れ始めた。2021年現在、水素・FCV政策の柱は、複数地域で構成するグループをモデル事業に選定し、地方政府主導で水素・FCVの技術開発、サプライチェーン構築を図ることである。各地で地方政府をメインプレーヤーとする水素・FCV産業圏がどのように発展するか、FCVについても世界最大の市場となる日は近いのか、関心が集まっている。
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