2009年11月11日
原口一博総務大臣が「グローバル時代におけるICT政策に関するタスクフォース」を発足させ、その第一回会合が10月30日に開かれた。選挙前後に政策検討がなされてこなかったICT(Information and Communication Technology , 情報通信技術)分野にようやく「拠り所」ができる。同タスクフォースは「過去の競争政策のレビュー部会」「電気通信市場の環境変化への対応検討部会」「国際競争力強化検討部会」「地球的課題検討部会」の4つの部会からなる。
この夏以降、情報通信政策に関連する動きは選挙の話題に関係なく活発であった。7月16日に政府は「i-Japan戦略2015」を公表、NTT再々編や日本版FCC(Federal Communications Commission , 連邦通信委員会)の是非などがメディアを賑わしてきた。ただ、少し離れて見ると、これまでの議論は明確な方向性がないままに特定のテーマに偏っていた感もある。現時点において、冒頭のタスクフォースでの議論は3つの「一体化」を視点として進むものと見られる。本稿ではこれを整理し2010年の論点としたい。
(1)インフラ産業/コンテンツ産業の一体化
従来、インフラ/コンテンツ双方の重要性が謳われることは多かったものの、具体化する過程では分けて扱われることが多かった。インフラとコンテンツ、両産業が一体となって発展する視点は総論レベルに留まって来た感がある。例えば、電波オークションに代表される「電波の有効活用」の議論にしても、単に空いている帯域を事業者に使わせ、コンテンツを流したところで実現できる話ではない。国民にとって価値あるコンテンツが提供されてはじめて、であろう。ならばインフラのあり方はコンテンツの特性と不可分であり、多様なビジネスモデルの類型を念頭に、一体となって議論されるべきである。
(2)有線通信と無線通信の一体化
日本は世界でもっともブロードバンド環境が整備された国の1つと言われる。その背景には固定通信網の充実がある。しかしながら、固定通信網の有効活用の議論がどれほどの熱を帯びているか。確かに「ユビキタス」が語られてきた以上、無線通信が脚光を浴びることはやむをえなかった面はある。ただ、固定通信に比べて無線通信は回線確保の点で有限資源である。とすれば、コンテンツが求めるインフラへの要件を明確にし、固定通信と無線通信の役割をはっきりさせ、最適なコンテンツ提供形態を探る議論がもっと盛んになってよい。
(3)国内市場と海外市場の一体化
海外市場の重要性を意識した議論を活発化すべきである。無論、内需中心の成長が重要であることは疑いない。国内市場が成長過程にあり、かつ十分な規模があれば、国際競争力をさほど意識する必要はない。しかし、国内市場が飽和し、日本の人口が減少していくことを考えれば、海外市場をどう取り込むかは避けて通れない課題である。地理的利点があるとはいえ、欧州では海外売上比率が四分の一を超える通信キャリアも少なくない。日本の特徴として、技術力がある、成長地域である東南アジアに近い、高齢化社会をいち早く経験する、といった点を強みに変え、国際競争力を強化する戦略について、総論を具体化することが必要である。
これまでの議論がやや細部に入りがちであった背景には、日本が目指すべき大局的な視点からのあるべき発展のロードマップが描けていないことがあったのではないか。2010年には将来の青写真が描かれ、広くステークホルダーに共有されていることを期待したい。
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