M&Aを成功させるために

ビジネスDDを有効に活用

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  • 間所 健司

最近、国内外においてM&Aが活発化している。国内市場の成長鈍化による日本企業同士の経営統合や買収、グローバル化により市場を世界に求めるための海外企業の買収が目につく。


一方で、これまでのM&Aがすべて成功しているわけではないとも言われている。M&Aの成功とは何か? M&Aの成功は、買収ができたことではなく、M&A後に期待した以上の企業価値を創出できたかにかかっている。


M&Aの本来の目的を達成し、成功に導くために、ビジネスデューデリジェンス(ビジネスDD)が不可欠であると考えている。


ビジネスDDの目的は、①対象会社の事業の実態を把握し、将来性を分析すること、②その事業の状況から自社とのシナジー効果を分析すること、③それらの分析に基づいて、買収価格を決定することにある。


M&Aでは、いくらで買収することが合理的であるのかを見極めること、いかに安く買収できるかが成功のカギではある。①と②の分析をそこそこに価格交渉と条件交渉に終始することもまれではない。しかし、売り手の思惑との相違や他に買い手がいた場合、買収価格の決定はそう簡単ではない。


買収価格を決定する以上に、ビジネスDDにおいて「事業の将来性分析」と「シナジー効果の分析」は必ずやっておくべきである。


事業の将来性分析では、対象会社の実態把握のために、①対象会社が属するマーケット環境(市場動向や競合環境等)の分析、②対象会社の事業構造分析などを行い、将来事業計画の妥当性を判断し、ときには修正事業計画を作成する。この修正事業計画がバリュエーションの基礎となるのである。この事業の将来性分析では、いたずらに精緻すぎる分析に陥ることなく、意思決定に必要な部分に留めることが重要である。


シナジー分析は、事業の将来性分析から得た事業実態から、自社事業とのシナジーを抽出することにある。まず、製造業であれば、「開発⇒製造⇒販売⇒保守・サポート」のビジネスプロセスから、どこにシナジー効果が発揮できるのかを抽出する。次にそのシナジー効果を数値化し、実現可能性を評価する。忘れがちなのは「ディスシナジー」である。ITシステムなどへの追加投資、顧客の流出や人材の流出が考えられる。これらのディスシナジーをリスクとして見込むことは重要である。


M&Aの成功には、PMI(Post Merger Integration:統合マネジメント)が重要であることは言うまでもないが、自社が考えた通りのPMIができるかどうかは、ビジネスDDの結果次第であるとも言える。つまり、M&Aが成功するための入り口に立つには、適切なビジネスDDを行うことである。そして、そのビジネスDDの結果を有効に活用することが、M&Aを成功させる近道となるのである。


ビジネスDDは自社のリソースだけに頼ると、買いたい気持ちだけが先行して適切なDDを行えないことも少なくはない。財務DDや法務DDなどと同じように、外部の第三者アドバイザーにビジネスDDを依頼することもひとつの方法である。

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