先日、サッポロホールディングスの株主総会が開催され、大株主であるスティール・パートナーズの議案は今回も否決された。その一方で、アデランスホールディングスでは、スティール・パートナーズの意向に沿う形での経営改革が進められている。


敵対的買収は、海外ファンドばかりではない。国内では、ドン・キホーテがオリジン東秀に買収を仕掛け、結果的にはイオンの傘下となったケース、王子製紙の北越製紙(現 北越紀州製紙)に対するTOBなど記憶に新しい。わが国では敵対的M&Aはなかなか成立しない状況にある。また、楽天と東京放送ホールディングスでは、買取価格についてまだ係争が続いている。

敵対的M&Aが増加している背景には次のようなものがあると考えられる。

(1)株価の低迷

リーマンショック以降、いまだにわが国の株価の低迷が続いている。PBR(株価純資産倍率:株価が1株当たり純資産の何倍あるのかという指標)1倍割れの企業が少なくなく、日本企業の株価の割安感が顕著である。特にキャッシュ・リッチの会社は買収のターゲットになりやすい。

(2)株式持合の変化

これまで銀行や生損保、取引関係会社などを中心とする株式の持合関係は、無意識のうちに敵対的M&Aへの対抗措置として機能してきた。しかしながら、銀行の自己資本規制の強化などにより、持合株式を減らしてきている。また、金融商品会計(時価会計)もそれを後押ししている。

(3)海外勢の攻勢と意識の変化

前掲のスティール・パートナーズなどの海外からの買収攻勢に続いて、村上ファンドなどの国内勢からの買収攻勢にさらされることで、敵対的M&Aに対する抵抗感も薄れ、自社の事業拡大のために敵対的M&Aを仕掛けるという動きも少なからず出ている。


少子高齢化により、中長期的には国内マーケットは縮小していくものと予想されている。今後は事業拡大において、自前主義を脱却し、国内・国外のM&Aを含め、場合によっては敵対的な手段によってでも企業価値を向上させるという手段をとる会社が増えてくることは十分に考えられる。

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