今年は持株会社体制である大手上場会社の経営統合が予定されている。ひとつは新日本石油と新日鉱ホールディングスの経営統合であり、もうひとつは、まだ具体的な内容は公表されていないが、非上場でありながら持株会社体制をとっているサントリーホールディングスとキリンホールディングスの経営統合である。
一般に企業が持株会社体制を採用する主な目的としては、
- グループ全体として最適な戦略立案・意思決定・投資が可能になる。
- 持株会社、各事業子会社とも役割が明確化し、事業責任が徹底される。
- 事業の買収や売却、再編などM&Aが容易になる。
などがある。
特に注目すべきは「M&Aの容易性」である。持株会社の場合、買収対象の株式を買うことや、株式交換を用いることで傘下に収めやすい。また、独立性もある程度は確保されるため買収される側の抵抗感も比較的少ない。しかしながら、買収の相手先が自社と同規模の会社であった場合や、同じような持株会社体制であった場合は統合プロセスが複雑化する傾向がある。
例えば、大丸と松坂屋ホールディングスが経営統合を果たした「J.フロント リテイリング」では、2007年9月に両社の株式移転により、J.フロント リテイリングを設立した。さらに同年11月に松坂屋ホールディングスをJ.フロント リテイリングに吸収合併させて、現在の体制をほぼ固めた。
開示資料によると、新日本石油と新日鉱ホールディングスにおいてもJ.フロント リテイリング方式を踏襲し、株式移転で(統合)持株会社を設立し、統合・再編・整理を進めていく計画である。一方、キリンホールディングスとサントリーホールディングスの経営統合については、様々なマスコミ報道がなされているが、具体的な情報はまだ開示されていない。
現在、持株会社体制を採用している上場会社は300社ほどある。当然のことながら、今後は持株会社同士の経営統合も増えてくることが考えられる。そのとき、持株会社同士で合併するのか、株式移転でさらに(統合)持株会社を設立するのか、経営統合にあたっては工夫が必要である。
未曾有の経済環境の下、独禁法の改正もあいまって、国際競争力の強化など、勝ち残るための巨大企業グループのM&Aが2010年の注目テーマになりそうだ。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
M&A市場動向四半期レポート
~2026年度第1四半期レビュー~
2026年09月25日
-
外為法審査による買収案件中止とその示唆
外為法に基づく投資審査制度と判断のポイント
2026年07月10日
-
M&Aにおける移行サービス契約(TSA)締結に向けた課題と対策
買手とそのフィナンシャル・アドバイザー(FA)の立場から
2026年03月31日
関連のサービス
最新のレポート・コラム
よく読まれているコンサルティングレポート
-
M&A市場動向四半期レポート
~2026年度第1四半期レビュー~
2026年09月25日
-
退職給付制度を人的資本経営につなげる退職率分析
~人事データで離職・定着の構造を読み解く~
2026年09月25日
-
2026年6月株主総会シーズンの総括(前編)
機関投資家の議決権行使基準の厳格化が進むも全体賛成率は改善
2026年08月20日
-
アクティビスト投資家の近時動向(2026年4月)
「変質」しつつあるアクティビスト投資家。「対話」から「交渉」に。
2026年04月09日
-
2026年6月株主総会の株主提案数(速報)
2026年6月株主総会の株主提案数は101社と過去2番目の多さ
2026年06月17日
M&A市場動向四半期レポート
~2026年度第1四半期レビュー~
2026年09月25日
退職給付制度を人的資本経営につなげる退職率分析
~人事データで離職・定着の構造を読み解く~
2026年09月25日
2026年6月株主総会シーズンの総括(前編)
機関投資家の議決権行使基準の厳格化が進むも全体賛成率は改善
2026年08月20日
アクティビスト投資家の近時動向(2026年4月)
「変質」しつつあるアクティビスト投資家。「対話」から「交渉」に。
2026年04月09日
2026年6月株主総会の株主提案数(速報)
2026年6月株主総会の株主提案数は101社と過去2番目の多さ
2026年06月17日

