『中国の社会保険制度』

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  • 佐井 吾光
中国の社会保険制度は地方政府に大きな裁量権が与えられているため地域的に不統一であった。このため全国的な統一性を保つために、2010年10月28日、社会保障制度の基本法である中華人民共和国社会保険法が発布され、2011年7月1日施行される。本法は中国社会保険分野における初めての総合的な法律であり、養老保険、医療保険、労災保険、失業保険、生育保険にかかる関連規定が定めてある。本法の発表により、中国の社会保険制度が試験段階から、持続可能発展段階に向かっているといわれている。

中華人民共和国社会保険法が発布される前までの中国の社会保険制度は、中国労働法第73条で、「労働者は、次の各号に掲げる事由のいずれか一に該当する場合、法により社会保険給付を受ける。(1)定年退職 (2)罹患及び負傷 (3)業務上の理由による傷害・障害又は業務上の疾病(4)失業 (5)出産、労働者の死亡後、その遺族は、法により遺族手当てを享受する」とされ、同法第72条で、「使用者及び労働者は、法により社会保険に加入し、社会保険料を納付しなければならない」と規定していた。具体的には、養老保険、医療保険、労災保険、失業保険、生育保険の5保険で構成されている。5保険は中華人民共和国社会保険法に引き継がれている。養老保険、医療保険、労災保険、失業保険は、その制度内容は日本の制度に類似し、生育保険は日本にない制度である。


中国の社会保険制度は、現在整備途上の段階にあるが、今般の中華人民共和国社会保険法の施行により、今後益々整備が進むと思われる。その動向に注目したい。

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