2023年09月19日
◆2023年6月株主総会シーズンの特徴としては、(1)電子提供制度対応を含む株主総会の運営実務におけるデジタル化の進展、(2)機関投資家の議決権行使基準等の厳格化、(3)過去最高の株主提案実施に加え、経営陣とアクティビスト投資家の対立の先鋭化、があげられる。
◆一部のアクティビスト投資家は、提案内容が一般的な増配や自己株取得に留まらず、企業価値向上に向けてより本質的なガバナンス体制や経営方針の改善に踏み込んで提案してきており、会社側の経営における方向性の違いから、本株主総会シーズンにおいては会社側との対立が先鋭化する事例が目立った。
◆2023年6月株主総会シーズンの議決権行使結果は、主要企業500社(TOPIX500採用企業)の全議案の平均賛成率は前年比0.8pt低下の95.1%であった。特に経営トップ選任議案の平均賛成率は1.2pt低下の90.1%となっており、修正賛成率80%未満となった企業数は63社と前年の39社から大幅に増加している。経営トップ選任議案で機関投資家の反対票が多く集まったのは、不祥事企業、政策保有株式を純資産対比20%以上有する企業、低ROE企業、取締役会の構成で課題のある企業(独立社外取締役1/3未満、女性役員・取締役が不在)である。
◆2024年6月株主総会シーズンに向けては、①政府目標である2030年女性役員比率30%を意識した議決権行使助言会社・機関投資家の議決権行使方針の厳格化を見据えた対応が必要となる。②株主提案のすそ野がいわゆるアクティビスト投資家だけでなく大手運用会社にも広がっており、従来以上に資本市場との対話に留意する必要がある。③経済産業省が2023年8月末に公表した「企業買収における行動指針」を踏まえた対応が求められ、特に買収防衛策の導入企業においては設計見直しが求められる。
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