2019年6月株主総会シーズンの総括と示唆

“株主の「物言う化」”と“資本市場との対話の深化”が進む

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  • コーポレート・アドバイザリー部 主任コンサルタント 吉川 英徳

サマリー

◆2019年6月株主総会シーズンの特徴は“広がる株主の「物言う化」”と“資本市場との対話の深化”であった。具体的な注目点としては、①買収防衛策の廃止・非継続企業の増加、②取締役会構成の見直し(独立社外取締役比率3分の1以上、女性取締役の選任等)、③アクティビスト投資家との対話の深化、④機関投資家等の支持を集める株主提案の増加、等が挙げられる。

◆2019年6月株主総会シーズンの主要企業(TOPIX500)における議決権行使の状況を集計した結果を見ると、機関投資家・議決権行使助言会社の議決権行使基準の厳格化を背景に、経営トップ選任議案の賛成率は年々低下している事が確認できた。特に「不祥事企業」、「低ROE企業(ROE5%未満)」、「監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社等において社外取締役比率が3分の1未満の企業」の経営トップの賛成率が対前年比で大きく低下している。

◆2020年6月株主総会シーズンに向けたポイントとしては、「親子上場の在り方(上場子会社のガバナンスの在り方)」、「政策保有株式の縮減」、「低ROE企業の機関設計の見直し」、「東京証券取引所の市場制度改革」が考えられる。機関投資家の上場企業に対する目線が引き続き厳しくなる中で、上場企業には資本市場を意識した経営が今まで以上に求められる。

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