ESGニュース
伸び悩む大学進学率

―平成24年度学校基本調査から―

2012年9月11日

環境調査部 岡野 武志

文部科学省が毎年実施している「学校基本調査」の平成24年度速報値が公表された(※1)。この調査では、学校教育行政に必要な学校に関する基本的事項を明らかにすることを目的として、全国の学校等について、学校数、在学者数、卒業者数、就職者数、進学者数等を調べている(※2)

平成24年の調査では、全国の大学数は783校となっており、前年より3校増加している(国立±0、公立-3、私立+6)(※3)。しかし、大学(学部・大学院)の在学者数は17,661人減少しており、大学への入学者数も、前年と比較して学部で7,473人、大学院修士課程で4,398人減少している。人口減少に伴って18歳人口(※4)が減少していることが理由の一つとなっているが、大学(学部)への進学率も前年との比較で低下している。(図表1)

大学の設置者別の状況をみると、私立大学は全大学数の3/4を超える605校あり、平成24年の私立大学(学部)への入学者数は、大学入学者全体の78.3%を占めている。しかし、平成24年には私立大学数は6校増加したのに対し、私立大学(学部)への入学者数は7,091人減少している。私立大学への入学者数減少は、大学への入学者数減少の大半を占めていることになる。卒業後の雇用機会が限られているとすれば、相対的に高いコストを負担することは、割に合わないということであろうか。

一方、専門学校(専修学校専門課程)では、進学者数と進学率に前年との比較でわずかながら上昇がみられる。専門学校の入学者数は減少傾向にあったが、平成22年頃からは医療、衛生などの分野を中心に入学者数の増加がみられている。専門学校では、各分野の公的資格の取得等を目指す人材を養成しており、希望する職業に直接役立つ教育を受けられることが、若者たちに見直されているのかもしれない。

図表1:大学・専門学校の入学状況
図表1:大学・専門学校の入学状況
※入学者には高等学校卒業後1年以上経過した後に入学した者(過年度高卒者)等を含む。
※5月1日現在で在籍しないものは含まない
出所)「学校基本調査」より大和総研作成


平成24年の大学への入学状況を分野別にみると、全体の約1/3を占める社会科学分野で、前年に比べて入学者数の減少が目立っている。変化率でみると、芸術、家政、人文科学などの分野でも減少率が比較的高くなっていることがわかる。厳しい就職環境が続く中、どこかの企業に就職するという漠然とした将来像は描きにくくなり、就きたい職業を想定した上で、入学する分野を選ぶ若者が増えている可能性がある。保健や教育の分野では、入学者数の増加がみられており、卒業後の職業を具体的にイメージしやすいことが、若者の人気を集めているとも考えられる。もっとも、入学者数は、大学側が設定する各分野の定員枠や入学難易度にも影響を受けるため、必ずしも希望通りに進学できているとは限らない。また、各都道府県にある大学数には大きな格差があり(※5)、居住する地域によって選択できる範囲も大きく異なっている。

図表2:分野別入学者数の変化
図表2:分野別入学者数の変化
※入学者には高等学校卒業後1年以上経過した後に入学した者(過年度高卒者)等を含む。
※5月1日現在で在籍しないものは含まない
出所)「学校基本調査」より大和総研作成


平成24年の大学卒業者の状況をみると、入学者数が増加している教育分野は、正規・非正規を合わせれば就職率が84.7%と最も高い分野となるが、正規就職率(正規の職員等への就職率)は低く、非正規就職率(正規の職員等でない者と一時的な仕事に就いた者の比率)(※6)が高い。また、同様に入学者数が増えている保健分野でも、正規就職率は70.6%と比較的高いものの、非正規を合わせた就職率全体は72.7%とそれほど高くない。一方、入学者数が減少している分野では、工学、農学などの分野で正規就職率が高く、正規・非正規を合わせた就職率は8割を超えている。雇用形態や処遇は一様でないため、単純な比較はできないが、入学者数の動向と就職状況は必ずしも一致していないようにみえる。

図表3:平成24年大学卒業者の状況
図表3:平成24年大学卒業者の状況
出所)「学校基本調査」より大和総研作成

進学先を選ぶにあたっては、文科系と理科系などの選択を、高等学校在学中の比較的早い時期に求められることも多く、一度選択すれば、その選択を修正できる機会や範囲は限られているようである。社会や経済が急速に変化する中では、自らの適性や将来の就職状況などを勘案して、最適な道を選択することはおそらく容易ではないだろう。社会で活躍する人材を育成するためには、大学入学後にも変化に対応して学ぶ内容を修正することができ、あるいは、就職後にも再度異なる教育を受けることができる機会を広げていくことも重要になる。各方面で教育改革に係る議論が聞かれるが、教育を提供する側の論理ではなく、教育を受ける側の視点で、改革を進めていくことが望まれる。

(※1)「学校基本調査」文部科学省
(※2)調査対象は、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学、短期大学、高等専門学校、専修学校及び各種学校並びに市町村教育委員会。統計の数値は、各年の調査期日(5月1日)現在のものとなる。
(※3)通信教育のみを行う学校(私立7校)を除く。
(※4)18歳人口は、3年前の中学校卒業者及び中等教育学校前期課程修了者数
(※5)大学数が最も多い東京都の138校に対し、鳥取県、島根県、佐賀県の大学数は2校となっている。
(※6)正規の職員等でない者」は、雇用契約が一年以上かつフルタイム勤務相当の者、「一時的な仕事に就いた者」は雇用契約が一年未満又は短時間勤務の者を指す。

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