ASBJ、時価会計の一部緩和検討へ

新聞報道に一部誤解も

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2008年10月17日

  • 吉井 一洋

サマリー

◆2008年10月16日に、わが国の会計基準を設定するASBJ(企業会計基準審議会)は、時価会計の適用を一部緩和することの検討を開始する旨を決定した。

◆検討内容はIASB(国際会計基準審議会)が10月13日に公表した「金融資産の分類の変更」(満期保有目的への分類変更の緩和)と同様の措置をわが国でも導入するのか、導入するとしてどの程度認めるのかが中心になる模様である。なお、2008年9月中間期から適用という一部の報道は誤解であると思われる。

◆ASBJは10月16日付けで上記の検討とは別に金融資産の時価の取扱いについて確認する実務対応報告案を公表しており、10月23日までにコメントを求めている。こちらは月内にも確定する予定であり、9月中間期から適用ということもありうるが、現行実務を変更するものではない。

◆時価会計を緩和しても実態は改善しない。むしろ実態を隠すことにより、投資家や貸し手を疑心暗鬼に陥らせ、信用不安を助長する可能性がある。かつて不良債権について開示や償却を先送りしたことが傷口を広げ、問題の解決を長引かせたことを思い起こすべきであろう。

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