「中国経済回復」の虚実

中国経済が向かう先は失速か、バブル再来か

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2019年04月19日

  • 小林 俊介
  • 経済調査部 研究員 廣野 洋太

サマリー

◆「全人代」開幕期間に当たる3月11日から15日にかけて「北京」・「雄安新区」・「青島」を視察し、現地の有識者たちと意見交換を行った。今回のリサーチトリップで得られた知見は以下の通りである。

◆まず2018年の中国経済失速の主因は米中摩擦ではない。中国独自の政策変更によって内需が失速している最中に、関税の打撃が加わった、とみるべきだ。内需失速の背景は①理財商品への規制強化、②インフラ事業の絞り込み、③個人間消費者金融への規制導入、④自動車購入税の減免停止、などに求められる。このうち①②については、政治的な事情もあり、2019年に入って緩和方向へと大きく転換され、中国経済は回復に転じた。

◆ただし、中国国内の在庫水準が高いことから、中国経済の回復が日本企業に恩恵を及ぼすまでには相応のタイムラグを必要とするだろう。また、上述した③④が残存することから、消費の回復が遅れる公算が大きい。従って、日本企業の中でも、中国の消費に依存する分野での回復は当面、相対的に鈍いペースにとどまる可能性が高い。

◆他方で、朗報もある。日本企業の中でも在庫調整が進展している業種も、少なくない。たとえば電子部品・デバイス工業は2018年の中頃にかけて在庫水準が高まっていたが、2018年後半以降は調整が進められている模様である。また、2018年の前半に全に既に在庫水準が高まっていた輸送機械工業や電気・情報通信機械工業においては過剰在庫の調整は既に概ね終了している可能性が高そうだ。生産用機械工業に至っては在庫調整の削減が著しい。これらの業種においては、中国経済の持ち直しが日本企業の業績底入れにつながる可能性が、相対的に高いと言えるだろう。

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