サマリー
◆米国トランプ政権が再び通商政策上の強硬姿勢を強めている。これに対し、巨額の対米貿易収支黒字を計上している国々が行える建設的な譲歩は、市場開放に伴う輸入の増加、もしくは、米国への投資に伴う米国内における輸入代替生産の増加となろう。こうした措置により通商交渉が世界経済にとってネガティブサムなものに終わるシナリオを回避する可能性は残っている。しかし経済合理性よりも優先されうる米国の政治的意図-すなわち、中間選挙前のパフォーマンス、および、米国覇権の維持を目的とした中国の台頭抑制-を考慮する限り、米国主導のチキンレースが続く可能性も現時点では否定できない。
◆本稿では現時点で発動が予定されている通商政策について、日本経済、および日本企業の収益に与える影響を網羅的に分析した。その影響経路は大別して、①日本企業の対米(鉄鋼・アルミニウム)輸出に与える影響、②在外日本法人の輸出(中国⇒米国、米国⇒中国)に与える影響、③関税導入に伴う米中経済減速による副次的影響、および④米中貿易の縮小に伴う日本からの代替輸出(いわば「漁夫の利」)となる。本稿の試算結果によれば、これら4要因のいずれにおいても、日本経済および企業業績に与える影響は総じて限定的であるとの判断が妥当である。
◆米中が発動する通商政策による経済・企業収益への影響は、日米中ともに限定的である。にもかかわらず、金融市場の反応は非常に大きい。その背景は三つの要因-すなわち、①政策展望(ホワイトハウスの真意)に関する不透明性、②世界経済の成長率に対する高すぎた期待の下方修正、③中央銀行の出口戦略(流動性供給量の減少)に求められる。従って、リスク選好への回帰のカタリストとしては、①通商政策を巡る不透明性の後退、②世界経済見通し下方修正の払底、③2018年10月以降の金利上昇懸念の払拭、などが重要な役割を果たすことになると考えられよう。
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