消費本格回復のカギは高所得世帯と70 ~ 80 年代生まれ

『大和総研調査季報』2024年秋季号(Vol.56)掲載

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2024年10月24日

サマリー

コロナ禍以降、勤労者世帯の消費が停滞している。裁量的消費の回復が鈍く、消費行動の変化が衣料品への支出や交際費などを下押ししている。

勤労者世帯を年収五分位別に見ると、年収上位40%で平均消費性向の落ち込みが目立つ。とりわけ住宅ローンを抱えていない世帯で消費が停滞しており、首都圏を中心に住宅価格が高騰する中で、住宅購入を前にしている世帯の節約志向が強まっている可能性が考えられる。こうした問題への対応策として、中古住宅市場を活性化し、新築偏重の傾向を緩和することが挙げられる。具体的には、中古住宅の適正評価を行うことで住宅ローンを借りやすい環境を作ること等が必要だろう。

世帯消費を世帯主の出生年(コーホート)別に見ると、本来は消費を牽引する年齢層(40 ~ 50 代)にあたる「就職氷河期世代」の消費が低迷している。他方で1980 年代生まれは、共働きの増加により世帯全体の所得は高水準にあるものの、消費水準が世帯主の収入に左右されやすい。リ・スキリングなど収入増加のための支援が引き続き求められる。また、消費活性化のためには、「貯蓄から投資へ」の推進により資産や所得を増やすことも重要だ。

大和総研調査季報 2025年春季号Vol.58

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