サマリー
◆トランプ大統領は9月17日、中国からの約2,000億ドル相当の輸入品目に対して追加関税を賦課することを決定した。これに対して、中国も米国からの約600億ドル相当の輸入品目に対して、報復関税を決定している(いずれも実際の発動は同月24日から)。本稿では、既に内容が公開されている関税政策(米国500億ドル+2,000億ドル、中国500億ドル+600億ドル)について、品目別の追加関税率および金額を詳細に分析する。
◆同分析によれば、米国の対中関税は、対象品目の輸入総額が2,353億ドル、追加関税総額は2018年305億ドル→2019年588億ドル、対象品目に対する平均追加関税率は2018年13.0%→2019年25.0%となる。内訳としては、機械類および電子機器が大きなウェイトを占めている。他方で中国の対米関税は、対象品目の輸入総額が1,158億ドル、追加関税総額は175億ドル、対象品目に対する平均追加関税率は15.1%となっている。内訳としては、自動車、大豆に加え、機械類や発電機、制御装置といった電気機器のウェイトが大きい。
◆前提条件の変化を踏まえ、大和総研のマクロモデルを用いて日米中の経済に与える影響を再試算した。米国の2,000億ドルに対する追加関税率が10%で据え置かれた場合の試算値を確認すると、GDPの下押し効果はそれぞれ中国が▲0.17%、米国が▲0.15%となり、日本が▲0.01%となる。さらに米国の追加関税率が25%に引き上げられるケースでは、GDPの下押し効果はそれぞれ中国が▲0.22%、米国が▲0.28%となり、日本が▲0.02%となる。
◆もっとも、これらはあくまでもモデル上の試算値である。同モデルでは特定品目・特定産業に影響が偏っている場合の影響の波及効果を描写できない。OECDの試算によれば、中国から米国に輸出される品目のうち、実際には日本で付加価値が創造されている品目の総額は2011年時点で240億ドルに上り、うち152億ドルをコンピュータ・電子部品関連の品目が占めている。また、当時に比べて現在、中国の対米輸出総額は大幅に拡大していることを踏まえると、日本の関連産業が二次的に受ける影響も2011年当時より大きくなっている可能性が高い。当該産業における楽観は禁物だろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
「責任ある積極財政」下で進む長期金利上昇・円安の背景と財政・金融政策への示唆
「低水準の政策金利見通し」「供給制約下での財政拡張」が円安促進
2025年12月11日
-
2025年12月日銀短観予想
輸出不振や原材料高で製造業の業況判断DI(最近)は悪化を見込む
2025年12月10日
-
2025年7-9月期GDP(2次速報)
設備投資などが減少し、実質GDPは前期比年率▲2.3%に下方修正
2025年12月08日
最新のレポート・コラム
-
中国:来年も消費拡大を最優先だが前途多難
さらに強化した積極的な財政政策・適度に緩和的な金融政策を継続
2025年12月12日
-
「責任ある積極財政」下で進む長期金利上昇・円安の背景と財政・金融政策への示唆
「低水準の政策金利見通し」「供給制約下での財政拡張」が円安促進
2025年12月11日
-
FOMC 3会合連続で0.25%の利下げを決定
2026年は合計0.25%ptの利下げ予想も、不確定要素は多い
2025年12月11日
-
大和のクリプトナビ No.5 2025年10月以降のビットコイン急落の背景
ピークから最大35%下落。相場を支えた主体の買い鈍化等が背景か
2025年12月10日
-
12月金融政策決定会合の注目点
2025年12月12日
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
-
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
-
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日

