一括りにしてはいけないインバウンド

外国人旅行者の季節性、地域性等に配慮した適切な対応が求められる

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2016年09月08日

  • 笠原 滝平

サマリー

◆2015年の訪日外客数は1,974万人と2012年対比で倍以上に増加。さらに、政府は2020年に4,000万人、2030年に6,000万人を目標に掲げており、観光先進国に向けた取り組みが進む中、インバウンド関連データへの関心が高まっている。


◆一般的に時系列データには季節性が含まれていることが多く、見方を誤れば間違った判断をしかねない。そこで訪日外客数の季節性に着目すると、学校の長期休暇や花見、紅葉のシーズンに増加する傾向があり、一方で梅雨など天候が悪い時期、長期休暇の端境期などで減少する傾向がある。


◆さらに、国・地域に分けてデータを確認すると、中国の春節の時期は訪日外客数の増加が期待されるが、実際にはそれほど多くないことがわかった。また、10月にはヨーロッパやアメリカなど遠方からの訪日客が増加することなど、国・地域ごとに特徴があることがわかった。


◆百貨店の売上が増えるなどインバウンドに関する明るい話題が多い中、宿泊施設が不足するなどの問題点も指摘されている。訪日外客数をさらに増やすためには供給制約の緩和が重要である。さらに、今回見てきたような訪日外客の季節性や地域性、目的を捉え、ターゲットを絞ったPRを行い訪日客の分散を促すといった対策を講じることも、インバウンドのさらなる拡大に寄与すると期待される。

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