サマリー
◆デフレからの脱却を目指して、「3本の矢」による経済政策を進める安倍政権は、同時に賃金の上昇を目指している。安倍首相は経済団体に対して賃上げを要求し、一部の企業がそれに呼応するように給与の引き上げを検討したこともあり、賃金動向が注目されている。
◆日本では1990年代後半以降賃金が減少傾向にある。賃金の内訳をみると、特別給与と所定内給与が減少している。特別給与については、国内企業の収益環境悪化によって減少しているとみられる。所定内給与については、製造業では底堅く推移しているものの、非製造業での減少が顕著である。非製造業における賃金減少は、一般労働者賃金の減少とパート労働者比率の上昇が主因である。
◆短期的には、海外経済の回復や円安を受けた収益環境の改善が特別給与、および所定外給与を増加させ、所得の回復に寄与するだろう。ただし、所定外給与や特別給与の増加には限界があることから、安定的な賃金上昇には、所定内給与の増加が不可欠である。
◆足下の所定内給与の減少は、雇用者数の増加が続く、医療・福祉を中心とするサービス業で、一般労働者賃金が減少し、パート労働者比率が上昇していることに起因する。今後は、医療・介護分野において労働生産性や付加価値の向上を目指した、構造改革の動きが一層重要になる。
◆アベノミクスが目指す賃金上昇は、短期的には特別給与、所定外給与の増加を通じて達成される可能性がある。ただし、一時的に目標が達成されたとしても、特別給与、所定外給与が増加し続けるためには、所定内給与の増加が必須である。安定的な所得環境の改善につながる所定内給与の増加のために、規制改革を中心とする構造改革が欠かせない。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
同じカテゴリの最新レポート
-
2026年4月雇用統計
就業者数の増加で、失業率は2.5%と前月から0.2%pt低下
2026年05月29日
-
2026年4月鉱工業生産
コンセンサスに反して上昇、汎用・業務用機械工業などが増産
2026年05月29日
-
日本経済は持続的に成長できるのか -マクロモデルによる将来シナリオの検証
民間の行動変容、供給力強化、財政健全化、の一体的推進が必要
2026年05月29日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
-
いまさら人には聞けない 大量保有報告(5%ルール)のQ&A 【改訂版】
2024年金商法等改正法(2026年5月1日適用開始)を反映
2026年04月03日
-
検討進むガバナンス・コード改訂:2月案と4月案の相違点は
「解釈指針」は原則と一体という記述は削除。現預金への注目を避ける修文。
2026年04月10日
-
企業が意識すべきCGコード改訂案のインプリケーション
「金融資産」「実物資産」がコードに入った意味
2026年04月16日
-
日本経済見通し(2026年4月)
中東情勢緊迫による景気下振れリスク上昇で4月利上げは見送りか
2026年04月21日
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
いまさら人には聞けない 大量保有報告(5%ルール)のQ&A 【改訂版】
2024年金商法等改正法(2026年5月1日適用開始)を反映
2026年04月03日
検討進むガバナンス・コード改訂:2月案と4月案の相違点は
「解釈指針」は原則と一体という記述は削除。現預金への注目を避ける修文。
2026年04月10日
企業が意識すべきCGコード改訂案のインプリケーション
「金融資産」「実物資産」がコードに入った意味
2026年04月16日
日本経済見通し(2026年4月)
中東情勢緊迫による景気下振れリスク上昇で4月利上げは見送りか
2026年04月21日

