2025年02月28日
サマリー
◆日本銀行(日銀)は2024年7月の金融政策決定会合で国債買入れの減額を決定した。日銀が国債の保有残高を減らすということは、国債の発行残高が同様に減らない限り、他の主体が代わりに買い入れなければ、国が財政資金をスムーズには調達できないことを意味している。国債管理政策の観点から、国債保有のスムーズな移行に向けた課題について整理する。
◆銀行は、2013年から始まった日銀の量的緩和前までは、国債の主な保有主体だった。しかし、2016年に、バーゼルⅢで銀行勘定の金利リスク(IRRBB)規制が加わったことにより、国債を保有しづらくなった。バーゼル規制を見直す議論の趨勢によっては、銀行は国債を追加的に買い入れるどころか、将来的に、売却を迫られる可能性もある。また、日本の場合、どのくらいの残高のコア預金が滞留するかを推計することは容易ではない。想定よりも多くコア預金が流出した場合、金利リスクが上振れする可能性もある。
◆生命保険部門は、長期・超長期債を中心に国債を保有している。国内が低金利環境となる中、外債投資のウェイトを増してきたが、日本国債の利回りが上昇する中で外債を減らし、日本国債に回帰する動きがあるようだ。
◆海外部門については、欧米の中央銀行が利下げに転じる中、日本国債への投資が増加する可能性がある。ただし、国債消化を海外投資家に過度に依存することは、長期金利の急変動や上昇を招く可能性がある。国内投資家に比べ、海外投資家は日本の財政バランスの悪さを厳しく評価し、低い信用を補うためのリスクプレミアムを要求する傾向があるからだ。財政バランスを改善し、日本国債の信用力を高めていく施策が必要だ。特に、国債格付けの維持・向上がこれまで以上に重要になってくるだろう。
◆家計部門は、「貯蓄から投資へ」の機運が高まる中、国債の新たな保有主体となることが期待される。家計の国債保有を促す第一歩として、預貯金の代替となるような、安全性と利便性の高い商品開発が肝要だ。
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