2012年05月02日
サマリー
◆震災以降、多くの地域金融機関では事業の継続や再開等に必要な運転資金の貸出需要も重なり、順調に融資が拡大した模様だ。しかしながら、貸出金の増加と裏腹にリスクアセットの投資効率は低下したといわれる。その背景として、地域金融機関同士の金利の引き下げ競争の激化に伴い、優遇金利による長期固定貸出を増加させたことなどが指摘されている。
◆本稿では、各地域別の貸出金の状態を把握するため、全国を12の地域に分け、地方銀行など64行を対象に貸出金における金利リスク量とその投資効率を試算している。その結果、過去の金利競争の激化により長期固定の金利リスク量が高止まりする警戒感から、意図的に固定貸出を減少させる地域も確認された。
◆リスクアセットの投資効率改善のため、単純な貸出債権の転売によるオフバランス化は、金融危機以降の証券化商品に対する需要の低下や、我が国の信用市場が他の先進国と比べて未発達な分、容易には実行できない。今後の金融規制強化に対応するためにも、耐久性のある資本構築を実現し、流動性が低く金利リスクが高い資産の管理手法の構築を急ぐ必要があるだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
ステーブルコイン推進へ舵を切る米国(後編)
GENIUS法案は如何にして米ドルの支配的地位を補強するか
2025年06月13日
-
ステーブルコイン推進へ舵を切る米国(前編)
ステーブルコインの概要と現況
2025年05月19日
-
日本のウェルス・アセットマネジメントビジネスの方向性
~米欧と同じ付加価値を追求しているか~『大和総研調査季報』2025年春季号(Vol.58)掲載
2025年04月24日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
-
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日