木育(もくいく)は、木の利用を通して人と木や森との関係性を学び、人と自然との関わり方を考えられる豊かな心を育てる教育活動のことである。プラスチックやコンクリート等の人工物が溢れ、人と自然物とのつながりが薄れてしまった現代社会において、木育は人と自然が共存する社会の構築に役立つことが期待されている。
木育という言葉は、平成16年度に北海道で初めて使われた(※1)。森林が地球温暖化の緩和(二酸化炭素の吸収)に役立つ一方で、木は伐ってはいけないという意識が根強いなど、循環型資源に対する理解が不足しており、このままでは適切な森林管理や木材利用などに負の影響を及ぼすと懸念された。そこで、木の持つ魅力を利用者(消費者)に理解してもらい、木の文化を育み、森林に対する認識を高めてもらうために木育を始めた。
ほどなく、木育は、我が国の森林・林業施策の基本方針を定めた「森林・林業基本計画」(平成18年9月 閣議決定)にも取り上げられ、木材需要の拡大を戦略的に取り組んでいく上で、市民や児童の木材に対する親しみや木の文化への理解を深め、木材の良さやその利用の意義を学ぶ教育活動として促進していくことが明記された。翌年、林野庁は「木材産業の体制整備及び国産材の利用拡大に向けた基本方針」(平成19年2月)の中で、具体的な教育活動(木育)としてテキスト作り、木育を行う人材育成、木材加工学習、国産材製品の調達、ボランティアの森林整備、木材加工技術者の養成や地位向上等の取組みを関係省庁や事業者等が連携して推進していくこととした。
実際の木育は対象者の年齢や経験等に応じて、「木とふれあう」、「木に学ぶ」、「木と生きる」の三段階のプロセスを踏んで段階的に展開されることが多い。最初の「木とふれあう」ためのプロセスでは、地域の代表的な森や木の紹介活動、木製遊具を使った遊びやスポーツ活動などを行い、木の良さを体感することを目的にしている。「木に学ぶ」ためのプロセスは、入学時に植えて共に育つ共育木の導入、ウッドクラフトの作製、森林から木製品までの道のりをたどる木育ツアーなどを通して、木と森に関する知識や技術の獲得を目的にしている。最後の「木と生きる」ためプロセスは、これまでの木育で得たものを社会に浸透させるための普及活動や木育拠点の整備、実際の木造住宅の生活やペレットストーブ等を利用する木育スタイルの提案など、人と自然が共存する社会の構築に取り組むことを目的にしている。
北海道で木育が始まってから10年が経過し、全国の多くの地域で具体的な取組みが行われるようになってきた。人と自然が共存する社会を目指して、これからも木育を継続していくことが重要である。
「平成16年度協働型政策検討システム推進事業報告書 木育」(平成17年3月、木育推進プロジェクトチーム)、北海道木育(もくいく)推進プロジェクト事務局
(2014年12月9日掲載)
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