データヘルスとは、各医療保険者が保有する電子レセプト(診療報酬明細書)(※1)や特定健診・特定保健指導などの電子データを、IT(情報通信技術)を用いて解析し、その分析結果に基づき、事業計画(データヘルス計画)を立案し、PDCAサイクルに沿って実施される効率的・効果的な保健事業をいう。平成27年度からデータヘルス計画に基づいて事業が開始される予定である。(※2)
健康であり医療機関(病院・診療所)にかかっていないが潜在的な疾病リスクを抱えている加入者の早期発見や加入者の健康づくり、疾病予防や重症化予防に役立てることが期待されている。具体的には、医療費の適正化、効率的・効果的な保健事業の実施(事業所単位の被保険者の健康状態の把握)、加入者自身の健康に対する関心と取り組みを促す「意識づけ」対策、加入者独自の生活習慣病予防プログラムの実践、疾病の重症化予防、等の推進である。
40歳以上を対象とした特定健診の40~74歳における平均受診率は、健康保険組合(組合健保)と共済組合の男性加入者が8割を超えているものの、その他は男女ともに6割を下回る(平成24年度)(※3)。特定健診の受診率が低い現状では、健康増進事業の効果は限定的となり、民間事業者が参入する市場規模としても十分とはいえないだろう。受診率の向上は、データヘルスによるシステム面のみでは解決が難しく、多くは、人を介したアナログな従来的手法に頼らざるを得ない。過去、受診率向上に効果があった事例としては、契約健診機関の拡充、地域別の巡回健診の実施、自宅への葉書・ダイレクトメール送付や電話による勧奨、健診受診を推奨した健康宣言書の社内掲示、健康づくり実施方法についての情報提供、などが挙げられている(※4)。
健康寿命の延伸は、延伸年数分だけ医療費が増加することにもつながり、生涯の医療費+健康投資の費用総額は、現状の医療費と比較して、必ずしも抑制されるとは限らない。しかし、企業による従業員への予防・健康増進投資が、医療費の削減と労働生産性向上に寄与することについては、ここ数年、国内外で多くの研究成果が出始めている(※5)。
このため、データヘルスの主目的は、医療費削減効果に加え、労働生産性の向上、高齢期におけるQOL向上、ヘルスケア産業の創出や市場化などにあると考えられる。
(※1)平成26年9月末現在、レセプトは医科データが約97.2%、調剤データは約99.9%が電子化(オンライン+電子媒体)されている。(出所:社会保険診療報酬支払基金「レセプト電算処理システム年度別普及状況」)
(※2)厚生労働省ウェブサイト「データヘルス計画作成の手引き」
(※3)厚生労働省「特定健康診査・特定保健指導の実施状況」(平成24年度)
(※4)厚生労働省ウェブサイト「被用者保険におけるデータ分析に基づく保健事業事例集(データヘルス事例集)」第1章 特定健康診査の実施率の向上へ!
【事例1】被扶養者の健診受診率の向上を目指した施策(富士通健康保険組合)、【事例2】健康保険委員と連携した『一社宣言』の展開(全国健康保険協会(協会けんぽ) 大分支部)
(※5)高度情報通信ネットワーク社会推進本部(IT総合戦略本部) 新戦略推進専門調査会分科会 第1回医療・健康分科会(平成25年11月5日開催) 資料5-3(経済産業省提出資料)「健康寿命延伸産業の創出」
(2014年11月26日掲載)
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