建築物の環境認証

RSS

2014年06月04日

  • 物江 陽子

建築物の環境認証は、建築物に関わる環境負荷を低減するために、その環境性能を評価し、一定の基準を満たすものに認証を与えるものである。米国発のLEEDやENERGY STAR、英国発のBREEAM、日本のCASBEEなど、国によって独自の環境認証制度が開発されている。


LEED (Leadership in Energy and Environmental Design) は、1996年に米国で始まり、米国を中心に、中国や中東、南米など140以上の国・地域で展開している(※1)。認証基準はヒートアイランド抑制や雨水流出抑制、水利用の効率化、省エネ機器導入やごみの分別回収など。スターバックスが主要店舗でLEED認証を取得したほか、インテルが主要拠点で認証を取得するなど、大手企業の取得事例も多い。米国ではまた、環境保護庁が1992年に開始した省エネ認証制度ENERGY STARでも、1999年より建築物の認証を行っている。これはエネルギー効率に特化した認証制度で、認証件数は2012年末時点で2万件を超えている(※2)


BREEAM (BRE Environmental Assessment Method) は1990年に英国で始まり、英国を中心に50か国超で展開している(認証件数:1.5万件以上)(※3)。評価対象はエネルギー、水、屋内環境、汚染、交通、物質、廃棄物、生態系、マネジメントプロセス等。2012年のロンドン・オリンピックではオリンピック・スタジアムや競泳場をはじめとする複数の常設施設が認証を受けた(※4)


日本では国土交通省の支援によりCASBEE (Comprehensive Assessment System for Built Environment Efficiency) が開発されている(※5)。CASBEEでは建物の環境効率をエネルギー消費、資源循環、地域環境、室内環境等の観点から計測し、評価する。CASBEEは建築物の他、戸建住宅やまちづくりの第三者認証も行っているが(建築物総合環境性能評価認証制度による認証件数:189件)、環境性能評価方法を公開し、第三者認証にとどまらず広く評価制度の活用を促している。名古屋市や横浜市など24の自治体は、条例等で一定規模以上の建築物について、新築・増築等の際に建築主にCASBEEによる自主的な環境性能評価を義務づける「自治体版CASBEE」を導入している。


これらの環境認証はいずれも自主的なものだが、環境意識の高まりを背景に認証件数は増加している。米国では環境認証取得により賃料・入居率・転売価格等が上昇する傾向があるとの報告もあり(※6)、認証取得企業にとってはCSR対策とともに、不動産価値向上のための方策ともなっているようである。


(※1)U.S. Green Building Council

(※2)ENERGY STAR

(※3)BREEAM

(※4)Neil Paterson (2011) "Learning Legacy: Lessons learned from the London 2012 Games construction project" Olympic Delivery Authority.

(※5)一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構「CASBEE建築環境総合性能評価システム

(※6)米国におけるLEED及びENERGY STAR認証物件について賃料及び転売価格のプレミアムについて調査したFuerst, F. and McAllister, P. (2011), Green Noise or Green Value? Measuring the Effects of Environmental Certification on Office Values. Real Estate Economics, 39: 45–69. doi: 10.1111/j.1540-6229.2010.00286.xや、Piet Eichholtz, Nils Kok, and John M. Quigley, (2009) “Doing Well by Doing Good? Green Office Buildings,” Berkeley Program on Housing and Urban Policy Working Paper Series, W08-001など。

(注)文中の認証件数は執筆時(2014年5月28日)時点で、各認証団体のウェブサイトから確認できたもの。


(2014年6月4日掲載)

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。