建築物の環境認証は、建築物に関わる環境負荷を低減するために、その環境性能を評価し、一定の基準を満たすものに認証を与えるものである。米国発のLEEDやENERGY STAR、英国発のBREEAM、日本のCASBEEなど、国によって独自の環境認証制度が開発されている。
LEED (Leadership in Energy and Environmental Design) は、1996年に米国で始まり、米国を中心に、中国や中東、南米など140以上の国・地域で展開している(※1)。認証基準はヒートアイランド抑制や雨水流出抑制、水利用の効率化、省エネ機器導入やごみの分別回収など。スターバックスが主要店舗でLEED認証を取得したほか、インテルが主要拠点で認証を取得するなど、大手企業の取得事例も多い。米国ではまた、環境保護庁が1992年に開始した省エネ認証制度ENERGY STARでも、1999年より建築物の認証を行っている。これはエネルギー効率に特化した認証制度で、認証件数は2012年末時点で2万件を超えている(※2)。
BREEAM (BRE Environmental Assessment Method) は1990年に英国で始まり、英国を中心に50か国超で展開している(認証件数:1.5万件以上)(※3)。評価対象はエネルギー、水、屋内環境、汚染、交通、物質、廃棄物、生態系、マネジメントプロセス等。2012年のロンドン・オリンピックではオリンピック・スタジアムや競泳場をはじめとする複数の常設施設が認証を受けた(※4)。
日本では国土交通省の支援によりCASBEE (Comprehensive Assessment System for Built Environment Efficiency) が開発されている(※5)。CASBEEでは建物の環境効率をエネルギー消費、資源循環、地域環境、室内環境等の観点から計測し、評価する。CASBEEは建築物の他、戸建住宅やまちづくりの第三者認証も行っているが(建築物総合環境性能評価認証制度による認証件数:189件)、環境性能評価方法を公開し、第三者認証にとどまらず広く評価制度の活用を促している。名古屋市や横浜市など24の自治体は、条例等で一定規模以上の建築物について、新築・増築等の際に建築主にCASBEEによる自主的な環境性能評価を義務づける「自治体版CASBEE」を導入している。
これらの環境認証はいずれも自主的なものだが、環境意識の高まりを背景に認証件数は増加している。米国では環境認証取得により賃料・入居率・転売価格等が上昇する傾向があるとの報告もあり(※6)、認証取得企業にとってはCSR対策とともに、不動産価値向上のための方策ともなっているようである。
(※1)U.S. Green Building Council
(※2)ENERGY STAR
(※3)BREEAM
(※4)Neil Paterson (2011) "Learning Legacy: Lessons learned from the London 2012 Games construction project" Olympic Delivery Authority.
(※5)一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構「CASBEE建築環境総合性能評価システム」
(※6)米国におけるLEED及びENERGY STAR認証物件について賃料及び転売価格のプレミアムについて調査したFuerst, F. and McAllister, P. (2011), Green Noise or Green Value? Measuring the Effects of Environmental Certification on Office Values. Real Estate Economics, 39: 45–69. doi: 10.1111/j.1540-6229.2010.00286.xや、Piet Eichholtz, Nils Kok, and John M. Quigley, (2009) “Doing Well by Doing Good? Green Office Buildings,” Berkeley Program on Housing and Urban Policy Working Paper Series, W08-001など。
(注)文中の認証件数は執筆時(2014年5月28日)時点で、各認証団体のウェブサイトから確認できたもの。
(2014年6月4日掲載)
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
上場オーナー企業と公開買付制度・大量保有報告制度の見直し
2026年5月1日に大量保有報告書等の提出義務が発生する場合も
2026年05月15日
-
デジタルアイデンティティ・デジタルクレデンシャルをめぐる取組みと実装技術の論点整理(第1部)
デジタルアイデンティティの基本像と、EUDIウォレットにみる制度化・実装動向
2026年05月14日
-
熊谷亮丸の経済・金融 Foresight 何故、わが国では潜在成長率が低迷しているのか?
高市政権は成長戦略を強化する方針だが、①労働、②資本、③TFP(全要素生産性)という3つの要素をバランス良く底上げする必要
2026年05月13日
-
AIが変える議決権行使助言業
中立性・客観性確保のための利用を訴求へ
2026年05月13日
-
中東リスクがASEAN進出企業に与える影響の差は、どのように生じているか?
2026年05月15日
よく読まれているリサーチレポート
-
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
-
いまさら人には聞けない 大量保有報告(5%ルール)のQ&A 【改訂版】
2024年金商法等改正法(2026年5月1日適用開始)を反映
2026年04月03日
-
検討進むガバナンス・コード改訂:2月案と4月案の相違点は
「解釈指針」は原則と一体という記述は削除。現預金への注目を避ける修文。
2026年04月10日
-
企業が意識すべきCGコード改訂案のインプリケーション
「金融資産」「実物資産」がコードに入った意味
2026年04月16日
-
日本経済見通し(2026年4月)
中東情勢緊迫による景気下振れリスク上昇で4月利上げは見送りか
2026年04月21日
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
いまさら人には聞けない 大量保有報告(5%ルール)のQ&A 【改訂版】
2024年金商法等改正法(2026年5月1日適用開始)を反映
2026年04月03日
検討進むガバナンス・コード改訂:2月案と4月案の相違点は
「解釈指針」は原則と一体という記述は削除。現預金への注目を避ける修文。
2026年04月10日
企業が意識すべきCGコード改訂案のインプリケーション
「金融資産」「実物資産」がコードに入った意味
2026年04月16日
日本経済見通し(2026年4月)
中東情勢緊迫による景気下振れリスク上昇で4月利上げは見送りか
2026年04月21日

