容器包装リサイクル法(※1)は、容器包装廃棄物の減量化を図るとともに、資源として有効利用することを目的として、平成7年6月に制定され、平成12年4月から完全施行されている。商品等の容器や包装などは、流通段階では有用であっても、商品を使用する際や使用後には廃棄物となることが多く、家庭から出るごみの約6割(容積)を占めるともいわれている。この法律で「容器包装」は、商品の容器や包装で、商品の消費や商品との分離によって不要になるものを指す(※2)。容器包装のうち、商品の容器であるものとして施行規則で定めるものは「特定容器」とされ、鋼、アルミ、ガラス、プラスチック、段ボール、紙などの素材ごとに、缶、ビン、箱、袋、チューブ、キャップなどの構造・形状等が定められている(※3)。特定容器として定められたもの以外の容器包装は、「特定包装」と呼ばれている。
特定容器の製造等の事業を行う者は「特定容器製造等事業者」とされ、その事業において特定容器を用いる事業者は「特定容器利用事業者」となる。また、その事業において特定包装を用いる事業者は、「特定包装利用事業者」とされる。これらの事業者(特定事業者)は、再商品化の義務を負うことになる。この法律では、指定法人(公益財団法人日本容器包装リサイクル協会)を経由して、再商品化事業者に再生処理を委託するルートが用意されているが、自ら再商品化を実施することや指定法人以外と独自に契約して再商品化を委託することもできる。
「容器包装廃棄物」は、容器包装が廃掃法上の一般廃棄物となったものを指す。市町村は、容器包装廃棄物の分別収集をしようとするときは、分別収集に関する計画(分別収集計画)を定めなければならない。しかし、市町村はすべての容器包装廃棄物を分別収集しているわけではなく、容器包装廃棄物の品目により、分別収集を実施する自治体数は異なっている。また、市町村が分別収集しても、アルミ缶やダンボールなど、有償又は無償で譲渡できることが明らかで、再商品化する必要がない物については、再商品化義務の対象にはならない。特定事業者は、容器包装廃棄物のうち、図表2の「特定分別基準適合物(※4)」について、再商品化義務を負うことになる(※5)。
容器包装リサイクル法では、拡大生産者責任(EPR)が具体化されており、環境配慮設計等により製造事業者が環境負荷の低減を図ること、販売方法の工夫や簡易包装等により利用事業者が排出量の減量化を図ることなどが期待されている。しかし、すべての容器や包装等がこの法律上の「容器包装」とはなっていないこと、特定事業者に「特定包装製造事業者」が含まれていないこと、小規模事業者(※6)が再商品化義務の対象となっていないことなど、必ずしも網羅的に実施されていない側面もある。また、分別収集のための費用がリサイクルコストに占める部分が大きいこと、消費者による適正な分別排出が徹底されていないこと、資源として活用しやすい排出物が収集場所から持ち去られることなど、分別収集に関わる問題点も指摘されている。
(※1)「容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律」法令データ提供システム
(※2)したがって、容器包装に該当しないもの(焼き鳥の串、トイレットペーパーの芯など)や商品に該当しないものの容器包装(景品・賞品等を入れた箱、クリーニングの袋など)、商品の一部と考えられるもの(付箋紙・カレンダーの台紙、紅茶のティーバッグなど)、商品の使用後も不要にならないもの(CD・DVDなどのケース、書籍のカバーなど)は該当しないと考えられる。
(※3)「容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律施行規則」法令データ提供システム
(※4)「特定分別基準適合物」については、前掲の法律施行規則第4条により、図表中の①~⑥が示されている。
(※5)「平成23年度容器包装リサイクル法に基づく市町村の分別収集及び再商品化の実績について(お知らせ)」(平成25年3月4日:報道発表資料)環境省
(※6)製造業等:売上高2億4千万円以下かつ従業員20名以下、商業・サービス業:売上高7千万円以下かつ従業員5名以下
(2013年10月24日掲載)
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