産業活動の拡大や国民生活の向上に伴って、大量の廃棄物が発生するようになり、有害物質を含む産業廃棄物等の処理や野積み・不法投棄などへの対応を進めるべく、1970年のいわゆる公害国会において、旧清掃法を全面改正して廃棄物処理法が制定された。この法律は、廃棄物の排出抑制、適正な分別・保管・収集・運搬・再生・処分等の処理等により、生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ることを目的としている(※1)(第1条)。
廃棄物(※2)は以下のように定義・分類されており、国内で発生した廃棄物は国内で処理することが原則となる(第2条、第2条の2)。
国民には、廃棄物の排出抑制、再生利用、分別排出等により、廃棄物の減量と適正処理への協力が求められている(第2条の3)。一般廃棄物の処理責任は市町村にあるが、分別方法や費用負担等については、自治体ごとに異なる(第6条、第6条の2)。事業系一般廃棄物には排出者支払原則が適用され、処理料金を徴収される場合が多い。一般廃棄物の収集・運搬・処分を業として行うには市町村長の許可が必要になる(第7条)。一般廃棄物処理施設の設置には、都道府県知事の許可を要する(第8条)。
産業廃棄物(※3)の処理責任は事業者にある(第11条)。事業者が産業廃棄物を事業場外で保管する場合には、都道府県知事に事前の届出が必要になる(第12条)。産業廃棄物の多量排出事業者(※4)は、処理計画を作成し、その計画の実施状況を都道府県知事に報告しなければならない(第12条、第12条の2)。事業者が産業廃棄物の運搬や処理を委託する場合には、受託者に産業廃棄物管理票を交付し、運搬や処理の終了までを適正に管理する仕組みとなっている(第12条の3)。産業廃棄物の収集・運搬・処分を業として行うには都道府県知事の許可が必要になる(第14条)。産業廃棄物処理施設の設置についても、都道府県知事の許可を受けなければならない(第15条)。なお、当法律において、都道府県知事の権限に属する事務の一部は政令で定めるところにより、政令で定める市(政令指定都市等)の長が行うこととすることができると定められている(第24条の2)。
廃棄物処理施設を設置する場合には、施設の周辺地域の生活環境の保全と増進に配慮することとされている(第9条の4、第15条の4)。また、大規模な産業廃棄物の不法投棄の早期発見や拡大防止を図るため、環境省には不法投棄ホットラインが開設されている。
(※1)「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」e-Gov 法令検索
(※2)占有者が自ら利用又は有償で売却することができず不要になったものを指すが、廃棄物に該当するか否かは、その物の性状や排出の状況、通常の取扱い形態、取引価値の有無、占有者の意思などを勘案して総合的に判断される。
(※3)「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令」第2条では、特定の業種や施設に応じて産業廃棄物を規定している。
(※4)前年度の産業廃棄物の発生量が1,000トン以上、又は前年度の特別管理産業廃棄物の発生量が50トン以上の事業者
(2012年9月6日掲載)
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