保安林とは、水源のかん養や災害の防備、生活環境の保全の場の提供等の公共目的を達成するため、特にこれらの機能を発揮する必要がある森林として、農林水産大臣又は都道府県知事から保安林の指定を受けた森林をいう。
保安林においては、立木の伐採や家畜の放牧、土石の採掘、形質の変更等が規制され、森林の適切な保全と森林施業が確保される。保安林の根拠法である「森林法」(※1)には11の公共目的が掲げられており、各々の目的に応じて17種類の保安林が定められている(図表)。
これまで、日本の森林面積(約2,510万ha)の約48%、国土面積(約3,779万ha)の約32%に相当する、約1,202万ha(実面積)の森林が保安林に指定されている(2011年3月31日現在)。種別の内訳を見ると、水源かん養保安林と土砂流出防備保安林の比率がそれぞれ約71%と約20%で、両者で全体の9割超を占める。実面積のおよそ6割超の約750万haについては、1953年の大水害(※2)の発生を契機として1954年に制定された「保安林整備臨時措置法」(※3)によって緊急かつ計画的な保安林の整備が政策的に進められた。
なお、近年では水源かん養や災害防備のみならず、地域の社会的、経済的実情が考慮された合理的な運用も行われている。例えば、保安林を再生可能エネルギー設備に供する場合に保安林解除の要件や作業許可の基準が緩和されたり(※4)、地域活性化につながる伐採等の森林施業の規制を緩和(※5)したりするなどの措置が取られている。
(※1)法令データ提供システム「森林法」
(※2)国土交通省九州地方整備局ウェブサイト「防災の取組みと過去の災害」
(※3)保安林整備臨時措置法は4回延長されたが2004年3月31日に効力を失った。法令データ提供システム「保安林整備臨時措置法」
(※4)内閣府行政刷新会議ウェブサイト「エネルギー分野における規制・制度改革に係る方針」
(※5)首相官邸ウェブサイト「総合特別区域の第4次指定について」
(2013年10月7日掲載)
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