森林認証制度は、第三者の認証機関が、持続可能な森林経営の基準・指標を満たしている森林を認証するとともに、認証森林から生産される木材製品を分別・表示管理している加工・流通業者を認証する制度である。消費者が認証木材製品を選択的に購入すれば、生物多様性や土砂災害防止などの公益機能(※1)を有する森林の保全と適切な利用に繋がり、循環型社会の実現が図られる。
もとは、違法伐採などによる熱帯雨林の減少対策として林業関係者などが自発的に始めた活動だったが、国連環境開発会議(地球サミット)における森林減少対策や持続可能な森林経営のための原則の採択などを契機に、欧米諸国を中心に制度化が進んだ。森林は各国における社会的、経済的、文化的な位置づけが異なるため、制度は国・地域ごとに作られることが多いが、個別の事情を考慮したり相互承認したりするなど国境を越えた世界的規模の制度もある。代表的な制度の概要を図表にまとめた。
日本では2003年に林業団体や環境NGO等によって「緑の循環認証会議(SGEC)」が設立された。森林面積の約4割を人工林が占め、小規模な森林所有者が多く、森林の機能も水源涵養から生活に密着した里山林まで多様であるなどの実情を考慮した制度になっている。日本の森林(2,510万ha)に占める認証森林面積はSGECおよびFSCを合わせても137万ha(全森林面積の約5%)で、ドイツの794万ha(同72%)やフィンランドの2,150万ha(同97%)(※2)に比べると小さい。この差は制度の歴史が浅いこともあるが、消費者の認知度が低いために認証木材製品の販売がふるわず、生産者が認証コストを負担して制度を利用する経済メリットを享受できないことも一因として挙げられている。国等の公共機関は消費者として、森林認証制度等で持続可能性が証明された木材製品等を率先して調達するなどの取組みを進めている(※3)。今後も、消費者および生産者双方による制度の活用が期待される。
<ウェブサイト>
FSC(Forest Stewardship Council)
MTCC(Malaysian Timber Certification Council)
PEFC(Program for the Endorsement of Forest Certification scheme)
緑の循環認証会議(SGEC: Sustainable Green Ecosystem Council)
(※1)生物多様性の保全、国土の保全、土砂災害の防止、水資源の涵養、保健休養の場の提供、木材生産機能など多面にわたる公益的な機能のこと。
(※2)FSCおよびPEFC資料(ウェブサイトは本文中に記載)。
(※3)環境省ウェブサイト
(2013年6月27日掲載)
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