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埋設農薬

2013年06月04日

調査本部 主席研究員 兼 社会連携担当 岡野 武志

戦後使用されていたDDTなどの有機塩素系農薬は、残留性が高いなどの理由から、1971年に販売の禁止又は制限が行われている。使用できなくなったこれらの農薬は各地で回収されたが、無害化処理法が確立されていなかったため、農林省(当時)の指導により、周辺に漏洩しない方法で埋設処理が行われた。こうして埋設された農薬は、「埋設農薬」と呼ばれている。その後、2001年に「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(※1)」が採択され(2004年発効)、残留性有機汚染物質(Persistent Organic Pollutants:POPs)の適切な管理及び処理が求められたことを受け、同年に埋設農薬の状況が調査されている。


農林水産省によれば、2001年の調査では、全国の168ヶ所で約4,400トンの埋設農薬が確認されたという。所在が確認された埋設農薬は、掘削して回収の上、無害化処理が進められており、2013年10月時点では、確認された埋設量の9割以上が処理済とされている(※2)


埋設農薬の処理量(2013年10月現在:トン)

しかし、埋設農薬の調査は、埋設処理からおよそ30年が経過した後に開始されており、埋設当時の記録や関係者の記憶が不正確な場合や土地の利用状況が変化していた場合などには、所在の確認が困難であったことも考えられる。2007年に実施された「埋設農薬調査・掘削等マニュアル(案)における意見募集(パブリックコメント)(※3)」には、「すでに明らかになっている埋設個所以外に、農家手持ちのPOPs系農薬や小規模埋設個所が存在する恐れがあるため、徹底した全国的な調査を実施すべきである」との意見も寄せられている。


環境省が公表している「埋設農薬調査・掘削等マニュアル(※4)」をみると、埋設形態としては、大規模なものではコンクリート製の槽等の中に農薬を封入した保管容器(ドラム缶等)を埋設している例が多かった一方、小規模なものには、埋設用の穴にビニルシートを敷いて農薬をくるむ、モルタルで固める、ガラス容器等に農薬を入れて埋設する、などのさまざまな形態があったことがうかがえる。また、「埋設処分を開始する前後に砒素剤や有機リン剤等の使用が禁止された経緯があること等から、パラチオンのような有機リン剤や、水銀、銅や砒素を含む農薬も一緒に埋設されている可能性がある」としている。


埋設農薬となった農薬などには、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)の第一種特定化学物質や毒物及び劇物取締法の毒物・劇物等に指定されているものも多く、環境中に放出された場合の影響は大きいと考えられる。廃農薬の埋設指導があった後にも、継続して保管されていた事例や周辺の土壌や地下水で有害な成分が検出された事例なども報告されており(※5)、適切な調査、管理、処理に向けた取り組みを続けていくことが求められよう。2013年5月に閣議決定された「第三次循環型社会形成推進計画(※6)」でも、「埋設農薬について、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約を踏まえ、都道府県が行う処理計画の策定や、周辺環境への悪影響防止措置に対する支援を実施する」とされており、今なお継続している問題とみられている。


(※1)「ストックホルム条約(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条 約:Stockholm Convention on Persistent Organic Pollutants(POPs))」外務省

(※2)「埋設農薬の管理状況」農林水産省

(※3)「埋設農薬調査・掘削等マニュアル(案)における意見募集(パブリックコメント)の結果について」環境省(平成20年1月17日:報道発表資料)

(※4)水・土壌・地盤環境の保全:農薬対策関係:その他「埋設農薬調査・掘削等マニュアル」(平成20年1月17日)環境省

(※5)「質問答弁経過情報(POPs系農薬等に関する質問主意書)」衆議院(第156回通常国会:平成15年6月10日提出、平成15年9月5日答弁書受領)

(※6)「第三次循環型社会形成推進計画(案)に対する意見の募集(パブリックコメント)について(お知らせ)」環境省(平成25年5月31日:報道発表資料)なお、引用した部分の原文では「ストックホルム条約」の後に(注30)が挿入されており、(注30)にて同条約について説明されている。


(2013年6月4日掲載)

(2014年10月10日更新)

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