化学物質審査規制法(化審法)

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2013年02月27日

  • 伊藤 正晴

正式名称は、「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」で、「化学物質審査規制法」または「化審法」と略称されている。


本法は、1968年に起こったポリ塩化ビフェニル(PCB)による健康被害(カネミ油症事件)を契機として、PCBのように環境中では容易に分解せず(難分解性)、生物の体内に蓄積しやすく(高蓄積性)、継続的に摂取される場合に人の健康を損なうおそれ(人への長期毒性)を有する化学物質が、環境汚染を通じて人の健康に被害を及ぼすことを防止することを目的として、1973年に制定された。その後、化学物質の管理に関する国内外でのさまざまな取り組み等を反映した法改正により、現行法では人だけでなく動植物への影響の観点も含めた審査規制がなされている。また、化学物質の「有害性」だけでなく、人や動植物へどれだけ影響を与える可能性があるかの「暴露量(エクスポージャー)」を加味した「リスク」を適切に管理するための法となっている。



  1. 本法の内容は、大きく分けて次の3つから構成されている。

  2. (1)新規化学物質に関する審査及び規制

  3. 我が国において新たに製造・輸入しようとする化学物質(新規化学物質)についての事前審査

  4. (2)上市後の化学物質に関する継続的な管理措置

  5. 本法制定以前に製造・輸入が行われていた既存化学物質を含む、すべての化学物質を対象としたリスク管理

  6. (3)化学物質の性状等に応じた規制

  7. 性状等に応じて次に示すカテゴリーに指定された化学物質に対する規制


・第一種特定化学物質

PCB類似の3つの性状、すなわち、「難分解性」、「高蓄積性」、「長期毒性(人又は高次捕食動物(※1))」を有する化学物質で、その製造・輸入について許可制(原則使用禁止)をとるとともに、その使用については政令で指定する特定の用途以外は認めない等の厳しい規制が課されている。


・第二種特定化学物質

「高蓄積性」の性状は有さないが、「長期毒性(人又は生活環境動植物(※2))」を有する化学物質のうち、相当広範な地域の環境において相当程度環境中に残留している、またはその見込みがあるもの。製造・輸入の予定数量等の事前届出等の義務付け、必要に応じた製造・輸入の予定数量の変更命令などが規定されている。


・監視化学物質

「長期毒性(人又は高次捕食動物)」の有無は明らかになっていないが、「難分解性」と「高蓄積性」を有することが明らかになっている化学物質で、製造・輸入実績数量や用途等の届出、取扱事業者に対する情報伝達の努力義務等の措置が規定されている。取扱状況の報告や有害性調査により、長期毒性を有することが見込まれる場合は、第一種特定化学物質に指定される。


・優先評価化学物質

「長期毒性(人又は生活環境動植物)」や被害のおそれが認められる環境残留について、これらのリスクが十分に低いことが不明な化学物質で、製造・輸入実績数量及び用途等の届出、取扱事業者に対する情報伝達の努力義務等の措置が規定されている。有害性情報や取扱状況の報告、有害性調査により長期毒性や被害の恐れが認められる環境残留が見込まれる場合は、第二種特定化学物質に指定される。


(※1)高次捕食動物:生活環境動植物に該当する動物のうち、食物連鎖を通じて難分解性を有し生物の体内に蓄積されやすい化学物質を最もその体内に蓄積しやすい状況にあるもの。

(※2)生活環境動植物:その生息、または生育に支障を生ずる場合には、人の生活環境の保全上支障を生ずるおそれがある動植物。


[参考資料]

下記の各省のWebページに、化学物質審査規制法に関連する各種の情報が掲載されている。

厚生労働省「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)ホームページ

経済産業省「化学物質審査規制法

環境省「化学物質審査規制法ホームページ


(2013年2月27日掲載)

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