ウッドマイルズは、建築物等で使用される木材の環境性能を評価する指標の一つで、産地から消費地までの木材の輸送距離及び輸送のために消費した化石燃料から排出される二酸化炭素の排出量等を指数化したものである。ウッドマイルズ研究会(※1)が食糧の環境評価指標「フード・マイレージ」(※2)にヒントを得て開発した。
ウッドマイルズは目的に応じて4つの指標が用意されている(図表1)。「ウッドマイレージ」は木材の実際の輸送距離及び量を総合的に示す指標、「ウッドマイレージL」は産地と消費地の直線距離及び量を示す指標、「ウッドマイレージCO2」はトラックや船舶などによる輸送過程で排出される二酸化炭素(CO2)の量で環境負荷を示す指標、「流通把握度」は木材流通経路の把握の度合いを表す指標である。
一例として、一般的な木造住宅(40坪)のウッドマイレージCO2を産地別に求めると、地域産材(産地と消費地の距離が150kmと仮定)を使用した場合は494 kg-CO2、産地を問わず(輸入材も含めた)一般的な国内流通木材を使用した場合は2,857 kg-CO2、欧米からの輸入材を使用した場合は6,782 kg-CO2となる(数値は「ウッドマイルズ研究ノート13(2006)」ウッドマイルズ研究会などによる)。このように、ウッドマイルズは産地と消費地が近いほど小さな指数となることから、木材の環境負荷の程度を知る手がかりとなる。
ウッドマイルズの活用事例としては「京都府産木材認証制度(ウッドマイレージCO2認証制度)」が知られている(※3)。京都府内で生産された木材の産地証明に加えて、ウッドマイレージCO2を示すことで、地域産材の利用と地球温暖化対策を進める制度である。京都議定書の発効日(2005年2月16日)に認証木材製品を初出荷した。認知度が高まるにつれて取扱事業者(伐採、製材、建築、販売業者等)の数は273(2013年3月7日現在)に増え、隣接県への販売でも参考にされている。
ウッドマイルズは建築物の環境性能の一部分を評価する指標だが(※4)、各地の地域材での活用が増えれば、二酸化炭素排出量の削減に加えて、地場の林業や関連産業の活性化につながる可能性を秘めている。
(※1)ウッドマイルズ研究会ウェブサイト
(※2)農林水産省ウェブサイト
(※3)京都府ウェブサイト
(※4)建築物の環境性能は、自然エネルギー、断熱、省エネ機器、水資源保護、再生材料、汚染物質、採光、空調など多様な項目で評価される。
(2013年4月15日掲載)
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