地球温暖化防止のための国際会議(国連気候変動枠組条約(UNFCCC)締約国会議)で取り決められた京都議定書(※1)において、二酸化炭素の吸収源として認められている森林を「森林吸収源」という。我が国の国土は約3分の2(約2,500万ha)が森林で覆われているが、吸収源として認められる森林は、京都議定書3条3項(新規植林、再植林)および3条4項(森林経営)で定義された次の3種に限定されている(※2)。
国土が狭く、土地開発が進んだ我が国では、新たに森林造成を行うことは難しいため、森林吸収源のほとんどは既存の森林を対象にした3の森林経営が占めることになる。京都議定書における温室効果ガス削減目標6%(基準年排出量比)のうち、3.8%は森林による吸収量で賄うこととされている。なお、森林吸収源の吸収量の算定は、温室効果ガスのように基準年と京都議定書第一約束期間(2008年度~2012年度)との差ではなく、約束期間における全ての純吸収量を削減量として参入する方式が採用されている。
森林吸収源を確保するための政策として、農林水産省は「地球温暖化防止森林吸収源10カ年対策」(2002年12月閣議決定)を策定し、2003年度から2012年度までの10カ年にわたり取り組んできた。育成林(※3)に対しては間伐等の森林整備を推進し、天然生林(※4)に対しては保安林指定を推進するなどした結果、2008年度の森林吸収量は基準年排出量比3.4%、2009年度は同3.7%、2010年度は同3.9%と、いずれの年度においても目標達成ラインを上回る実績を残している。
2011年度、2012年度および京都議定書第一約束期間(2008年度~2012年度)全体の吸収量は2014年4月までに国連気候変動枠組条約事務局に提出され、2015年中に専門家による内容審査が行われることになっている。
(※1)京都議定書の概要
(※2)京都議定書の本文
(※3)「森林を構成する林木を皆伐により伐採し、単一の樹冠層を構成する森林として人為により成立させ維持する森林(育成単層林)、及び森林を構成する林木を択伐等により伐採し、複数の樹冠層を構成する森林として人為により成立させ維持する森林(育成複層林)」(平成23年度 森林・林業白書)
(※4)「主として天然力を活用することにより成立させ維持する森林」(平成23年度 森林・林業白書)
(2013年3月29日掲載)
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
-
中国経済:2023年の回顧と2024年の見通し
24年の成長率目標は5%か?達成の鍵は民営企業へのサポート強化
2023年12月21日
-
2024年の米国経済見通し
①個人消費の腰折れ、②インフレ率の高止まり、③政治の停滞がリスク
2023年12月21日
-
2024年度税制改正大綱解説
定額減税は経済対策としては疑問だが、インフレ調整策としては有効
2023年12月25日
-
四半期報告書の廃止に関する改正法の成立
四半期報告書が廃止された後の四半期決算短信の内容は?
2023年12月04日
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
中国経済:2023年の回顧と2024年の見通し
24年の成長率目標は5%か?達成の鍵は民営企業へのサポート強化
2023年12月21日
2024年の米国経済見通し
①個人消費の腰折れ、②インフレ率の高止まり、③政治の停滞がリスク
2023年12月21日
2024年度税制改正大綱解説
定額減税は経済対策としては疑問だが、インフレ調整策としては有効
2023年12月25日
四半期報告書の廃止に関する改正法の成立
四半期報告書が廃止された後の四半期決算短信の内容は?
2023年12月04日