森林吸収源
2013年03月29日
地球温暖化防止のための国際会議(国連気候変動枠組条約(UNFCCC)締約国会議)で取り決められた京都議定書(※1)において、二酸化炭素の吸収源として認められている森林を「森林吸収源」という。我が国の国土は約3分の2(約2,500万ha)が森林で覆われているが、吸収源として認められる森林は、京都議定書3条3項(新規植林、再植林)および3条4項(森林経営)で定義された次の3種に限定されている(※2)。

国土が狭く、土地開発が進んだ我が国では、新たに森林造成を行うことは難しいため、森林吸収源のほとんどは既存の森林を対象にした3の森林経営が占めることになる。京都議定書における温室効果ガス削減目標6%(基準年排出量比)のうち、3.8%は森林による吸収量で賄うこととされている。なお、森林吸収源の吸収量の算定は、温室効果ガスのように基準年と京都議定書第一約束期間(2008年度~2012年度)との差ではなく、約束期間における全ての純吸収量を削減量として参入する方式が採用されている。
森林吸収源を確保するための政策として、農林水産省は「地球温暖化防止森林吸収源10カ年対策」(2002年12月閣議決定)を策定し、2003年度から2012年度までの10カ年にわたり取り組んできた。育成林(※3)に対しては間伐等の森林整備を推進し、天然生林(※4)に対しては保安林指定を推進するなどした結果、2008年度の森林吸収量は基準年排出量比3.4%、2009年度は同3.7%、2010年度は同3.9%と、いずれの年度においても目標達成ラインを上回る実績を残している。
2011年度、2012年度および京都議定書第一約束期間(2008年度~2012年度)全体の吸収量は2014年4月までに国連気候変動枠組条約事務局に提出され、2015年中に専門家による内容審査が行われることになっている。

(※1)京都議定書の概要
(※2)京都議定書の本文
(※3)「森林を構成する林木を皆伐により伐採し、単一の樹冠層を構成する森林として人為により成立させ維持する森林(育成単層林)、及び森林を構成する林木を択伐等により伐採し、複数の樹冠層を構成する森林として人為により成立させ維持する森林(育成複層林)」(平成23年度 森林・林業白書)
(※4)「主として天然力を活用することにより成立させ維持する森林」(平成23年度 森林・林業白書)
(2013年3月29日掲載)
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