各地に降った雨や雪は多数の水流を生み、次第に合流して大きな流れとなって海に至る。この樹木のように広がった水流全体は水系と呼ばれ、個々の水流は河川と呼ばれている。国土保全上または国民経済上特に重要な水系は「一級水系」とされており、利根川水系、木曽川水系、淀川水系など、全国の109の水系が指定されている(※1)。一級水系に係る河川で、国土交通大臣が指定した河川が「一級河川」となり、全国でおよそ1万4千の河川が指定されている。一級河川の河川延長を合計すると約8万8千㎞に及ぶという。
河川法は、「河川について、洪水、津波、高潮等による災害の発生が防止され、河川が適正に利用され、流水の正常な機能が維持され、及び河川環境の整備と保全がされるようにこれを総合的に管理することにより、国土の保全と開発に寄与し、もつて公共の安全を保持し、かつ、公共の福祉を増進することを目的」としている(第1条)。「国土保全上または国民経済上特に重要な水系」は、このような観点で指定されているものと考えられる。
一級河川の管理は、国土交通大臣が行なうこととされている。ただし、国土交通大臣の権限に属する事務の一部は、当該一級河川の部分の存在する都道府県の知事に委託することができる。従って、一級河川の延長は、都道府県知事が管理を委託された指定区間と国土交通大臣が管理する指定区間外区間(直轄管理区間)に分けられる。一級河川の総延長約8万8千㎞のうち、7万7千㎞あまりが指定区間とされている。
国土交通省では、一級河川の直轄管理区間において水質調査を実施し、結果を公表している。平成24年の調査(※2)では、「一級河川(湖沼及び海域を含む。)の直轄管理区間において、生活環境の保全に関する環境基準項目のうち、BOD(生物化学的酸素要求量)またはCOD(化学的酸素要求量)の環境基準を満足した地点の割合は、平成24年は90%(867地点/963地点)で、過去2番目に高い値であった」としている。河川のみでみれば、866地点中826地点(95%)で環境基準を満たしており、一級河川の水質は比較的良好とみられている。
(※1)「河川関係情報・データ」(平成24年4月30日現在)国土交通省
(※2)「平成24年全国一級河川の水質現況の公表について」(報道発表資料:平成25年8月2日)国土交通省
(2012年11月30日掲載)
(2013年9月2日更新)
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