国際エネルギー機関(IEA:International Energy Agency)は、主要石油消費国が石油を安定調達するために、第1次オイルショック(第四次中東戦争による原油価格の高騰と供給削減)後の1974年に、OECDの下部機関として設立された組織である。石油の99.4%を輸入(※1)している日本にとって極めて重要な国際機関といえる。
ミッションは、石油供給の物理的途絶に対して加盟国が集団的に対処することで、エネルギーの安全保障を促進することである。加盟28ヵ国(※2)は前年の平均純輸入量の90日分の石油備蓄が義務付けられており、緊急時には協調して備蓄を放出することで供給の不安定化に対処する措置が取られることになっている。また、近年では、拡大する気候変動問題にも配慮し、クリーンエネルギーに関する調査分析も行っている。
協調備蓄放出はこれまで3度行われている(図表1)。産油国の地政学リスクや自然災害等を原因とする大規模な供給の不安定化に対して速やかに放出してきた。協調備蓄放出は物理的な需給ギャップを埋めることが第一義的な目的だが、その影響は国際石油市場や原油価格、消費国の経済にも及ぶ。そのため、事前の警鐘、決定の公表、放出期間、放出量などが関係者の関心を集めることになる。
図表1 IEAによる協調備蓄放出
![図表1 IEAによる協調備蓄放出](/common/img/report/139_01.gif)
(出所:IEA資料等から大和総研作成)
調査分析に関しては各種報告会に加えて、毎年、約30の有料報告書(※3)と約70の無料報告書(※4)が刊行されている。各国のエネルギー政策や個別エネルギーの統計情報、二酸化炭素排出量に関するレポート、エネルギー取引市場のレポート、エネルギー技術関係の展望、世界エネルギーの展望など多岐にわたる。代表的な刊行物としては、全ての種類のエネルギーの需要、生産、貿易、投資、二酸化炭素排出などについて国・地域別、燃料別、部門別に分析している“World Energy Outlook”(※5)や、クリーンでエネルギー安全保障を高めた競争力のある低炭素社会を実現するための技術シナリオなどを示した“Energy Technology Perspectives”(※6)などが挙げられる。これらは各国政府の政策作成者や企業関係者の意思決定者にとって必須の報告書となっている。
(※1)日本の原油自給率は0.4%(2011年度)(資源エネルギー庁「エネルギー白書2012」)。
(※2)豪州、オーストリア、ベルギー、カナダ、チェコ、デンマーク、フィンランド、仏、独、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、伊、日本、韓国、ルクセンブルク、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、スロバキア、スペイン、スウェーデン、スイス、トルコ、英国、米国(英語表記アルファベット順)。
(※3)オンラインブックショップ
(※4)無料出版物リスト
(※5)“World Energy Outlook 2012 -Executive Summary- Japanese version”
(※6)“Energy Technology Perspectives 2012 -Executive Summary- Japanese version”
(2012年11月30日掲載)
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