LED電球は、これまでの家庭用照明器具(※1)の「白熱電球」や「蛍光ランプ」とは異なる原理で光る新しい光源である。省エネ・省資源といった環境性能が高いため白熱電球からの切替えが進んでいて、家庭の二酸化炭素排出量の削減に寄与するエコな商品として注目されている。

白熱電球は、投入された電気のほとんどが熱に変換されてしまうため、エネルギー消費効率(※2)(以下、効率)が低い。一方、LED電球は化合物半導体(※3)という物質に電気を流すと、物質そのものが発光するため効率が高い。発光部のサイズも小さくて済み、いわゆる球切れしないため省資源でもある。図表1は、3種の光源の一般電球タイプ(E26口金、60Wタイプ、全光束810 lm)の性能一覧である。白熱電球が最も安いが、効率が低くて寿命が短い。LED電球は電球形蛍光ランプとほぼ同じ効率を持ち、寿命は長いが価格は高い。

図表1 性能一覧図表1 性能一覧
(出所)大和総研作成。性能等数値は複数メーカーのおおよその平均値を、価格は家電量販店等の実勢価格のおおよその平均値を用いた。

次に、これら3種の光源を一般家庭で使用した場合の総コスト(光源代と電気料金)を予測した(図表2)。白熱電球(赤線)のコストは2ヶ月で電球形蛍光ランプ(黒線)のコストを上回り、1年8ヶ月でLED電球(青線)のコストを上回る。時間の経過とともにLED電球と電球形蛍光ランプの総コスト差は縮まり、20年(40,000時間)でほぼ等しくなる(※4)

図表2 1日当たり約5.5時間(年間2,000時間)点灯した場合のコスト比較図表2 1日当たり約5.5時間(年間2,000時間)点灯した場合のコスト比較
(出所)大和総研作成。電力量単価(25.90円/kWh)は東京電力の2012年10月分のものを使用した。従量電灯Bの30A契約(口座割引あり)で使用量290kWh/月を想定。

しかしながら、電球形蛍光ランプの性能改善に比べてLED電球の性能向上と価格低下が速く進むと予測されているため、総コスト差は徐々に縮まってくると思われる。LEDの関連事業者が設立した団体は、2015年頃にLED照明の効率がHf式蛍光器具(※5)を上回ると予測しており、価格との調整が実現すればあらゆる蛍光ランプのLED化が進む可能性がある(※6)


政府と関連事業者は省エネ照明機器(電球形蛍光灯、LED電球、Hf式蛍光器具等)の早期普及を目指して啓発活動に取り組んでいる。経済産業省は地球温暖化対策として、電球・照明器具の製造事業者、販売事業者、一般消費者団体等で組織される「省エネあかりフォーラム」を2008年5月12日に設立し、2012年を目途に、白熱電球から電球形蛍光ランプ等への原則切替えの実現を目指している。また、原発停止による電力不足を背景に、2012年6月には、経済産業省と環境省がLED照明やHf式蛍光器具等の高効率な照明製品の普及を促すことについて同フォーラムに対して改めて協力要請を行うとともに、キャンペーンを通して広く国民に対して情報提供を実施する「あかり未来計画」の活動を開始した。


これらの呼びかけを踏まえ、大手電球メーカーは2012年末までに白熱電球の生産を終了させることを決めた(※7)。事業者は併せて省エネランプの技術開発と販売に集中することになる。官民が一体となって地球温暖化対策に取り組む事例として注目していきたい。


(※1)一般に、家庭用照明器具は「白熱電球」、「蛍光ランプ」、「高輝度放電(HID)ランプ」に分けられる。HIDランプは高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ及び高圧ナトリウムランプの総称で、家庭の庭園灯や軒下灯などに用いられるが、多くは高光束・高輝度を活かした大規模空間の屋外広域照明や施設の屋内照明に使用されている。このため、今回の比較対象からは除いた。
(※2)光源から出てくる光の量(明るさ)である定格光束(単位はルーメン、lm)を定格消費電力(単位はワット、W)で除した値。
(※3)2種以上の元素から成る半導体物質を化合物半導体という。発光には窒化ガリウム(GaN)やリン化ガリウム(GaP)、ヒ化ガリウム(GaAs)などが使われる。
(※4)図表1の条件であれば、20年後の総コストは電球形蛍光ランプの方が約500円安い。
(※5)最近の学校やオフィスで使用されている、細い管径の高周波(High Frequency)点灯専用形蛍光灯を使った照明器具のこと。エネルギー消費効率が高く(約100 lm/W)、ちらつきも少ない。
(※6)LED照明推進協議会「白色LEDの技術ロードマップ」(2005年9月(初版)、2008年4月(改訂))によれば、2015年頃に白色LEDの発光効率が150 lm/Wに達すると予測されている。これを照明器具に組み込んだ場合のエネルギー消費効率は約100 lm/W程度と推測され、Hf蛍光灯と肩を並べることになる。
(※7)東芝ライテックは2010年度末、三菱電機オスラムは2011年度末に生産終了。パナソニックは2012年内に生産終了予定。

(2012年10月31日掲載)

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