1972年6月にスウェーデンのストックホルムで、国連として初めての人間環境会議が開催された。「かけがえのない地球(ONLY ONE EARTH)」をテーマとして開催されたこの会議では、人間環境の保全と向上に関する世界共通の見解と原則として、前文7項目と原則26項目から成る宣言が公表された(※1)。
前文では、「自然のままの環境と人によって作られた環境は、ともに人間の福祉、基本的人権ひいては、生存権そのものの享受のため基本的に重要である」との認識を示し、「人間環境を保護し、改善させることは」、「全世界の人々が緊急に望むところであり、すべての政府の義務である」としている。また、「発見、発明、創造および進歩」などにより環境を変革する力を、「誤って、または不注意に用いるならば、同じ力は、人間と人間環境に対しはかり知れない害をもたらすことにもなる」と述べている。さらに、人類が「歴史の転回点に到達した」との認識を示し、環境への影響に「無知、無関心であるならば、われわれは、われわれの生命と福祉が依存する地球上の環境に対し、重大かつ取り返しのつかない害を与えることになる」と警告している。
また、「開発途上国では、環境問題の大部分が低開発から生じている」として、「開発途上国は、開発の優先順位と環境の保全、改善の必要性を念頭において、その努力を開発に向けなければならない」とする一方、「先進工業国は、自らと開発途上国との間の格差をちぢめるよう努めなければならない」と指摘し、「共通の利益のため国家間の広範囲な協力と国際機関による行動が必要となる」としている。また、「環境上の目標を達成するためには、市民および社会、企業および団体が、すべてのレベルで責任を引き受け、共通な努力を公平に分担することが必要である」として、「各国政府と国民に対し、人類とその子孫のため、人間環境の保全と改善を目ざして、共通の努力をすることを要請」している。
人間環境宣言が、共通の信念として表明する26項目の原則は以下の通り。
(出所)環境白書(昭和48年版)より大和総研作成
国連人間環境会議に代表として参加した大石環境庁長官(当時)は、GNPを指標として経済の高度成長を進めた日本では、悲惨な公害の経験などを通じて「だれのための、何のための経済成長か」という疑問が国民の間に起こったことを受け、公害のない日本を目標として努力しつつあることを紹介している。国連人間環境会議の開催初日となった6月5日は、国連では「世界環境デー」とされており、日本でも環境基本法により「環境の日」と定められている。
(※1)「環境白書(昭和48年版)」環境省
(2012年7月31日掲載)
(2013年5月31日更新)
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
-
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
-
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
-
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日