2019年08月14日
サマリー
◆ESG投資の拡大に伴い、企業の非財務情報の開示が進み、投資家も企業も従業員満足度に注目している。企業経営の課題として従業員満足度や従業員に関するエンゲージメントの重要性が増しているからである。ただし、健康経営や従業員エンゲージメントをどう実践・推進し、計測するか、具体的なKPI設定にまでは至っていない企業が多い。
◆TOPIX500構成銘柄を対象に、従業員満足度調査に関する開示状況を調査すると、従業員満足度調査を実施する企業は294社と約6割に達しているが、それを非財務情報報告書で開示している企業は3割程度にとどまる。また、調査の「回答率」を開示している企業は38社、「満足度」が具体的にどれだけかを開示する企業は41社であった。
◆今後は、従業員満足度をKPIとして活用することで、従業員のエンゲージメントを向上させる取り組みの結果を定量的に把握することが可能となり、それを企業の持続的な成長に活かしていくことが期待される。
◆従業員満足度に関する情報が開示されることは、投資家にもメリットがある。従業員満足度がKPIとして明確化された企業の成長性が期待できるのであれば、従業員満足度を投資判断の際の指標に組み入れる投資家も増えていく可能性がある。
◆今後、企業のESGに対する取り組みが進むとともに、統合報告書などで非財務情報の開示が積極的に行われていけば、投資家の非財務情報に対する理解が深まり、企業と投資家の対話が促進されるだろう。
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