2013年04月01日
サマリー
環境省は東日本大震災からの復興に貢献するため、東北地方太平洋岸の自然公園群の再編成を始めた。第一弾として、岩手県から青森県にまたがる海岸沿いを「三陸復興国立公園」に指定することを決めた(※1) 。2013年3月26日の中央環境審議会の答申を受けたもので、5月24日(予定)の告示で正式に指定される。当日は、種差(たねさし)海岸(青森県八戸市)で開園記念式典が計画されている。
公園区域としては、既存の「陸中海岸国立公園」(※2)に「種差海岸階上(はしかみ)岳(だけ)県立自然公園」(※3)(青森県)及び八戸市鮫町の一部地域を編入した地域となる。そのため、公園は新設ではなく、陸中海岸国立公園の名称変更となる。被災地域の一体的な復興を目指すため、今秋以降に、「南三陸金華山国定公園」(※4)(宮城県)の編入が計画されている(図表1)。他の県立自然公園の編入については今後検討される。
自然公園(国立公園、国定公園、都道府県立自然公園)を指定する目的は、優れた風景地の保護と生物多様性の保全だが、同時に人々のリクリエーションや観光地として利用を図ることも目的とされる(自然公園法第1条)(※5)。三陸復興国立公園においては、これら従来の目的に加えて、観光業や農林水産業などの振興による地域経済の活性化を図ることになる。

プロジェクト全体は「三陸復興国立公園の創設を核としたグリーン復興」(※6)としてまとめられている。自然教化のための施設整備(園地、野営地、歩道、宿舎等)をはじめ、被災地域を巡る復興エコツーリズムの実施、青森県から福島県までの約700kmを結ぶ長距離自然歩道(みちのく潮風トレイル)の設定、自然の恵みと脅威を語り継ぐことができる人づくり(ESD)(※7)、地震・津波による自然環境への影響把握(自然環境モニタリング)などを実施することになっている(図表2)。なお、予算(平成25年度)は東日本大震災復興特別会計から約21億円、一般会計から約5億円の計約26億円が充てられる(※8)。

答申に先立って行われた有識者(※9)の現地視察では、災害の遺構の保存も大切なポイントであること、自動車や鉄道での移動のみならず海路でつなぐことも考えられること、南北に長いため、複数の自治体の協働管理が重要なこと、自然を基礎にしたレジリエンスの強化が社会的・経済的・地域的にも望ましく、三陸復興国立公園をそのモデルに位置付けていくことが重要であるなどの意見が出された。
最後の“自然を基礎にしたレジリエンスの強化”は、地震や津波の脅威にさらされている日本の多くの自治体に求められているものである。これまで三陸海岸は大景観のみが注目されてきたが、実際には古くから人が自然の脅威と戦いながら地域の資源を活かすことによって世代を継いできた地域である。今回の自然公園の再編により、人々の認識を改める機会となり、グリーン復興プロジェクトがレジリエンス強化のお手本となることに期待したい。
(※1)環境省報道発表資料(http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=16492)
(※2)環境省国立公園ウェブサイト(http://www.env.go.jp/park/rikuchu/)
(※3)青森県自然公園ウェブサイト(http://www.pref.aomori.lg.jp/nature/nature/kouen_tanesashi.html)
(※4)宮城県国定公園ウェブサイト(http://www.pref.miyagi.jp/soshiki/sizenhogo/minami-kinka.html)
(※5)自然公園法(http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S32/S32HO161.html)。陸中海岸国立公園が国立公園に指定された昭和30年代の状況については、佐山浩「わが国の昭和30年代における国立公園指定の特徴と背景」ランドスケープ研究 66(5), 2003を参照のこと。
(※6)グリーン復興ビジョン(http://www.env.go.jp/press/file_view.php?serial=19858&hou_id=15188)
(※7)持続可能な開発のための教育(Education for Sustainable Development)のことで、持続可能な社会の実現を目指し、一人ひとりがよりよい社会づくりに参画するための力を育むための学習や活動のこと。
(※8)平成25年度環境省重点施策(平成25年1月)(http://www.env.go.jp/guide/budget/h25/h25juten-2.pdf)
(※9)中央環境審議会自然環境部会委員(http://www.env.go.jp/council/12nature/meibo12.html)
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