ダイバーシティ経営:いまだ「女性」が課題の日本企業

~変えるには何が必要か~『大和総研調査季報』 2013年新春号(Vol.9)掲載

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2013年03月01日

  • 河口 真理子

サマリー

ダボス会議を主催する世界経済フォーラムでは、各国の政治や経済各領域において男女間のギャップを示した指標ジェンダー・ギャップ指数を公表している。先進国でありながら日本は135カ国中101位(2012年)である。企業のCSR活動としてジェンダーのダイバーシティは環境と並んで重視され、男女共同参画は10年以上前から政府の重点課題であり、育児支援などのワークライフバランス策は充実してきた。女性活躍と経済、企業業績との間には正の相関性を示す実証研究も枚挙にいとまがない。しかし、いまだに女性管理職比率は係長クラスでも平均で1割強程度にとどまる。

何が障害なのか。それは、「男性は仕事、女性は家庭」という古い価値観を変えることなく、ワークライフバランス策を先行して推進し、男女共同参画のための取り組み(ポジティブ・アクション)が後手に回った結果、家庭責任を担う女性社員(「兼業主婦」)を大量に生み出したためではないか。彼女たちは家庭を優先するので残業ができない、昇進を望まないなど、職場での活躍はあまり期待できない。安倍新政権では「2020年までに指導的地位の女性比率30%以上」を目標に掲げる。女性活躍を企業価値向上と経済活性化につなげ、ガラパゴス化を回避するには、古い価値観の見直しと、男性のワークライフバランス、およびポジティブ・アクションの強力な推進、すなわち、男女ともに家庭責任と職場の責任を果たすような意識の醸成と社会インフラづくりこそが急務ではないか。


大和総研調査季報 2024年新春号Vol.53

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