SRIの動向と女性取締役を有する企業のリターン分析

『大和総研調査季報』 2012年春季号(Vol.6)掲載

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  • 伊藤 正晴

サマリー

財務的な情報だけでなくESG(環境、社会、コーポレート・ガバナンス)要因も考慮する投資であるSRI(社会的責任投資)が世界的に拡大しているが、欧米と比べると日本の市場規模は非常に小さい。その背景には、欧米では機関投資家によるSRIが主流となっているのに対し、日本のSRIは個人投資家向け商品が中心となっているという違いがある。しかし、日本においても「ワーカーズキャピタル責任投資ガイドライン」や「21世紀金融行動原則」など、機関投資家によるSRIが期待できる動きが出てきた。

実際にSRIが拡大するにはESG要因と企業パフォーマンスの関係を明らかにする必要があろう。そこで、分かりやすいESG要因として女性取締役を取り上げ、パフォーマンスを分析したところ、女性取締役を有する企業への投資は株式市場を大きく上回るリターンが得られた。また、リスク調整後の超過リターンは月次ベースで+ 0.341%の統計的に有意な値となった。ESG要因が投資パフォーマンスの向上に寄与することを示唆しよう。

今後、ESG要因に関するデータや検証結果が充実し、日本のSRI市場が拡大していくことが期待される。

大和総研調査季報 2024年新春号Vol.53

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