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米国大統領選挙と環境・エネルギー政策

2012年01月12日

物江 陽子

サマリー

2012年の環境・エネルギー分野における動きとして、米国の大統領選挙に注目している。オバマ大統領は就任以来、再生可能エネルギーへの政策支援拡充や温室効果ガス排出規制の導入など「グリーンな」施策に力を入れてきたが、景気回復が遅れるなか、支持率は低下し(※1)、「グリーンな」施策にも見直しを求める声が出ている。

本年11月に行われる大統領選挙に向けて、早速1月3日にアイオワ州で共和党の党員集会が開催され、候補者選定プロセスがスタートした。政策論議では、経済政策や外交政策とともに、環境・エネルギー政策も論点となっている。下記では、共和党候補者のうち、ギャラップ社調査による支持率上位4名の関連施策のポイントをまとめた(図表)。

図表:共和党大統領候補者の環境・エネルギー関連政策のポイント図表:共和党大統領候補者の環境・エネルギー関連政策のポイント
(注)共和党候補者間の支持率。2012年1月5日~9日、共和党支持者への調査による。
(出所)アイオワ州党員集会はFOX紙報道記事、支持率調査はギャラップ社ウェブサイト、施策は候補者公式ウェブサイトより大和総研作成。

図表からわかるように、オバマ政権の環境・エネルギー政策については、特に(1)石油やガスなどエネルギー開発に関する規制、および(2)大気浄化法(Clean Air Act)に基づく、環境保護庁によるCO₂排出規制、が批判の的となっている。共和党候補者は、(1)については規制緩和、(2)については大気浄化法からのCO₂除外や環境保護庁の改革・廃止を求めている。なお、再生可能エネルギーについては候補者により立場が異なるが(※2)、現時点で最も支持率が高いロムニー氏は、技術に競争力がなく雇用喪失につながるとしてかなり批判的である。

一方、民主党オバマ政権の「グリーンな」施策には、今のところ大きな方針転換は見られない。石油・ガスについては「安全で責任あるかたちでオフショアのエネルギー資源開発を拡大する」ため「アグレッシブな規制改革を進める」としており、安全性確保を優先する基本的な立場に大きな変更はないように見受けられる。温暖化対策については、車両の温室効果ガス排出基準・燃費基準強化の方針を打ち出しており、環境投資については2012年度予算案で、省エネ関連を2010年度比倍増し、再生可能エネルギー関連を同7割増とする方針を示している(※3)

振り返ってみれば、前回2008年秋の大統領選挙では、共和党の大統領候補者であったマケイン氏もオバマ氏に負けず劣らずの環境派で、両者の環境・エネルギー政策に大きな違いは見られなかった(※4)。今回は打って変わって、政策スタンスが大きく異なる二者間で激しい政策論争が展開されることになりそうだ。大統領選で共和党が勝った場合、米国はオバマ政権がとってきた「グリーンな」施策は、大幅な見直しを余儀なくされる可能性があろう。

(※1)米ギャラップ社の調査によれば、オバマ大統領の支持率は2012年1月2-8日時点で46%、不支持の47%を下回っている(http://www.gallup.com/poll/124922/Presidential-Approval-Center.aspx)。
(※2)再生可能エネルギーに関連して、使用している用語は候補者により異なり、ロムニー氏は「代替エネルギー」(Alternative energy)という用語を使っているが、代表的な代替エネルギーとして風力や太陽光発電を挙げているため、ここでは再生可能エネルギーと同義とする(“Believe in America: Mitt Romney’s Plan for Jobs and Economic Growth”)。
(※3)ホワイトハウスウェブサイトより。
(※4)マケイン氏、オバマ氏ともに温室効果ガス削減目標を掲げ、キャップアンドトレードの導入と環境関連ビジネスの育成を公約に盛り込んでいた。

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