2011年12月09日
サマリー
カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト(CDP)とは、地球温暖化問題等に対する企業の対応について広範な調査を行っている、世界各国の機関投資家によるイニシアチブである(事務局はロンドン)。2011年2月時点の署名金融機関数は551(日本からは16機関)、これら機関による運用資産額は71兆ドルにのぼっている(図表1)。CDPでは、毎年、世界中の企業に対しアンケートを送付し(第一回調査は2003年)、気候変動に対する戦略や温室効果ガス排出についての開示(Carbon Disclosure)を求めている。

(出所)CDPウェブサイトから大和総研作成
CDPによる調査対象企業は、FTSE Global Equity Index Series を構成する大手企業500社(Global 500)をはじめ、各地域の大手企業や各産業セクターの代表企業等に年々拡大しており、直近ではおおよそ4,800社を対象にアンケートを送付し、3,050社から回答を得ている(グローバルベース、図表2)。また、この調査結果(レポート)は、毎年、CDPのウェブサイトで公表され、投資情報の一つとして機関投資家等によって広く利用されている(※1)。

(出所)CDPウェブサイトから大和総研作成
先ごろ、CDPによる主要レポート(年報)である「CDP Global 500」にあわせ、日本の大手500社(※2)を調査対象にした「CDP Japan Report 2011」が公表された(※3)。今回の日本調査については、215社(回答率43%)が回答し、セクター別にみると、テレコム(同60%)、素材・原材料および電気技術(56%)の回答率が高い。
回答企業のうち、96%(196社)が排出削減目標を設定しているうえ、94%(192社)が、気候変動に対する責任を負っている最高機関として役員会を挙げており、我が国企業においても、気候変動への対応が経営の重要課題として定着していることがうかがえる。さらに、今年は原発問題に起因する電力不足から、各社とも省エネ対応が必須となったため、温暖化ガス排出削減活動の半分がエネルギー効率化から派生するもので占められた。
温室効果ガスに関する総合的なディスクロージャー指標として、CDPでは調査対象企業に対してディスクロージャー・スコアを付している。当該スコアは100点満点で、70点以上が「高い」、50~69点が「中程度」、50点未満が「低い」とされ、「中程度」以上の企業については素点が開示される。
今回の日本調査における平均点は、気候変動に対するマネジメントのコミットメントが向上しているため、前回比+9点の61点となっており、我が国企業の当該開示は改善している。また、今年の調査からは、ディスクロージャー・スコアが高かった(50~)企業については、温暖化対応策に対するパフォーマンス評価が実施され、温暖化に対するマネジメント対応の高低によって、6段階(バンド)にわたる一種の格付けがなされている(図表3)。

(注)ディスクロージャー・スコアが50未満の企業にはパフォーマンス評価なし。社名は一部略称。
(出所)CDPジャパン500レポート2011から大和総研作成
地球温暖化対策の促進に関する法律(温対法)等の施行に伴う排出量報告義務や、再生可能エネルギー固定価格買取制度、温暖化対策税の導入等により、温室効果ガスの排出に関し、各企業の行う対応に関心が高まっている。また、原発問題を契機に、エネルギー政策の抜本的見直しが求められていることから、再生可能エネルギー導入等への取り組み姿勢が、将来の企業競争力を左右することも考えられる。CDPは、これら経営環境に対応する企業の姿を映す鏡として、今後とも注目に値しよう。
(※1)https://www.cdproject.net/en-US/Results/Pages/overview.aspx
(※2)日本企業を対象にした調査は今回が6回目となる。また、従来は上場時価総額上位500社を対象にしていたが、今回はFTSEジャパン・インデックス企業を基本に、500社を対象に調査。
(※3)投資家向けのCDPレポート(年報)は、グローバルのほか、株価インデックス編、各地域別、産業別等がある。

(出所)CDPウェブサイトから大和総研作成
CDPによる調査対象企業は、FTSE Global Equity Index Series を構成する大手企業500社(Global 500)をはじめ、各地域の大手企業や各産業セクターの代表企業等に年々拡大しており、直近ではおおよそ4,800社を対象にアンケートを送付し、3,050社から回答を得ている(グローバルベース、図表2)。また、この調査結果(レポート)は、毎年、CDPのウェブサイトで公表され、投資情報の一つとして機関投資家等によって広く利用されている(※1)。

(出所)CDPウェブサイトから大和総研作成
先ごろ、CDPによる主要レポート(年報)である「CDP Global 500」にあわせ、日本の大手500社(※2)を調査対象にした「CDP Japan Report 2011」が公表された(※3)。今回の日本調査については、215社(回答率43%)が回答し、セクター別にみると、テレコム(同60%)、素材・原材料および電気技術(56%)の回答率が高い。
回答企業のうち、96%(196社)が排出削減目標を設定しているうえ、94%(192社)が、気候変動に対する責任を負っている最高機関として役員会を挙げており、我が国企業においても、気候変動への対応が経営の重要課題として定着していることがうかがえる。さらに、今年は原発問題に起因する電力不足から、各社とも省エネ対応が必須となったため、温暖化ガス排出削減活動の半分がエネルギー効率化から派生するもので占められた。
温室効果ガスに関する総合的なディスクロージャー指標として、CDPでは調査対象企業に対してディスクロージャー・スコアを付している。当該スコアは100点満点で、70点以上が「高い」、50~69点が「中程度」、50点未満が「低い」とされ、「中程度」以上の企業については素点が開示される。
今回の日本調査における平均点は、気候変動に対するマネジメントのコミットメントが向上しているため、前回比+9点の61点となっており、我が国企業の当該開示は改善している。また、今年の調査からは、ディスクロージャー・スコアが高かった(50~)企業については、温暖化対応策に対するパフォーマンス評価が実施され、温暖化に対するマネジメント対応の高低によって、6段階(バンド)にわたる一種の格付けがなされている(図表3)。

(注)ディスクロージャー・スコアが50未満の企業にはパフォーマンス評価なし。社名は一部略称。
(出所)CDPジャパン500レポート2011から大和総研作成
地球温暖化対策の促進に関する法律(温対法)等の施行に伴う排出量報告義務や、再生可能エネルギー固定価格買取制度、温暖化対策税の導入等により、温室効果ガスの排出に関し、各企業の行う対応に関心が高まっている。また、原発問題を契機に、エネルギー政策の抜本的見直しが求められていることから、再生可能エネルギー導入等への取り組み姿勢が、将来の企業競争力を左右することも考えられる。CDPは、これら経営環境に対応する企業の姿を映す鏡として、今後とも注目に値しよう。
(※1)https://www.cdproject.net/en-US/Results/Pages/overview.aspx
(※2)日本企業を対象にした調査は今回が6回目となる。また、従来は上場時価総額上位500社を対象にしていたが、今回はFTSEジャパン・インデックス企業を基本に、500社を対象に調査。
(※3)投資家向けのCDPレポート(年報)は、グローバルのほか、株価インデックス編、各地域別、産業別等がある。
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